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78.ISOで儲けることはできるのか

社長がいなくても回る工場は、
審査も道具として利用する
社長がいないと止まる工場は、
人の数だけルールがある

「ISOの審査があるので、今週は工場に張り付いていないと。資料の確認もあるし、現場もチェックして回らないと・・・」

こんな風に、「審査のため」の仕事をする社長やその担当者をたくさん見かけます。
確かに聞かれた質問にはちゃんと答えたい、思わぬところを指摘され、あとで無駄な改善策を立てたくない、そのような心理はどうしても働いてしまうものです。

私「社長、この資料は普段どのように使われているんですか?」
社長「〇〇のようなことがあった時、チェックしておくための資料です。年間に1度使うか使わないか・・・」

このような資料でも、管理資料として登録がされていれば、重要な資料として資料ナンバーを取ったり、更新の記録を付けたり、いろいろと「生産には関係ない仕事」が増えていってしまうことがとても多くあります。

さらに、ISO9001認証取得している企業は、外注先の管理もしなければいけません。従って外注先はその企業から監査を受け、指摘されたり、意味があるのか悩みながら改善したり、しかし改善しなかったら取引に悪影響があるかもしれない、という危機感を感じながら、社内ではISO用の資料が保管されたりしていることが多くあります。

これこそ、社内用の通常ルールと取引先向けの表向きのルールの二つが存在する、「ダブルスタンダード」という状態です。

ISO9001認証取得されている工場はとても多いのではないでしょうか。
多くの企業が、2000年代前半に取得しています。当時は、発注側の企業が、取引継続の条件として受注側の企業に、認証取得することを強制していました。

前述の社長のように、認証機関による審査のたびに、あるいは取引先による監査のたびに工場に籠ってチェックをして回らないといけない、という状況は、この強制力により自動的に働いてしまうもので仕方がありません。

よく、ISO系のコンサルタントが、「形だけのISOをやっても意味がない」と言うのを聞きます。しかし、認証取得「させられる」側の企業にとって、品質マネジメントシステム的に良いかどうかより、取引が継続できるかどうかの方がとても重要なのです。
冒頭の社長の会社でも、認証取得した理由は、発注者側が取引継続の条件として提示されたため。近年ではその取引先からの売上に対する割合も低くなり、継続を止めようかと検討しているとのこと。
まさに、品質マネジメントシステムの導入により品質を良くするという目的ではなく、仕事を受注するための手段だったことが伺えます。

建設業のその例は、「公的なお墨付き」ですから、必須要件ではないとなれば、その後取得していないことによる不利益はあまり考えられません。
しかし製造業の場合、発注先が取らなくてもいいと発信したとしても、それは絶対的なものではないため、受注側の企業は、取引に影響がないよう、慎重になるでしょう。

多くの工場が、コンサルタントに指導を受けて導入、運用しています。これはとても効率的で良いことだと思います。

しかし大事なことは、自社の品質マネジメントシステムをコンサルタントの思いのままに作られてしまう、それが自社の仕事の仕組みとなってしまう、ということをどう捉えるのか考えなければいけません。
目的や現時点で仕事の仕組みがない状態でコンサルタントを依頼する場合、ほとんどの場合「認証審査を通過すればいい」ということだけが目的になるはずです。

これはとても危険な状態です。社内で自ら仕事のやり方のダブルスタンダードを構築してしまうからです。

そして、ISO9001は、
「仕組みがあること」
「それが機能していること」
「継続的に改善していること」
これしか求めていません。「何をどうするか」の中身を指定していないのです。
だからコンサルタントが中身をこうしたらいいよ、というアドバイスはあくまでもアドバイスであり、しかもそれは認証審査が通過しなければならないということに偏ったアドバイスになりがちです。本当の意味で、工場経営の仕組みを経営者の立場で理解し、作業者の生産性向上に役立つものになるかどうか、それは社長が見極めなければいけません。

実際、「何をどうやるか」中身の指定がないひとつの例として、資料のデジタル化が挙げられます。デジタル化しなければならないとも、紙のこのような書式を使わなければならないとも指定はありません。しかし、今までのISOの実績で生まれた書式が存在したりします。そして、そのことにより、なんとなくそれを運用することが正解となってしまっていないでしょうか。

紙の書式そのままの見た目を、ExcelやWordで再現し、PCで入力することをデジタル化したということにしている工場もあります。これは明らかに過去の資料管理が足を引っ張っています。必要なことが記録されていれば、クラウドサービスをうまく使うことでも認証は通ります。弊社でもその実績はありますし、審査官も雑談の中で教えてくれることもあります。

デジタル化できれば品質マネジメントシステムの運用を継続しやすくなるかといえば、紙の時代に比べればそうだと言えますが、取引先からの取引条件などに含まれていたり、取引条件にはなかったとしても監査対策用の対応が別管理で常態化している状態では、その状況は大きく変わりません。

考えなければならないのは、ISOをどのように使えば良いのか。どのような道具なのか、ということです。

例えばISO9001認証を取得していてもいなくても、発注先からの監査は避けられません。
その際、自社独自の品質マネジメントシステムですと主張したところで、それが機能していない、継続的に改善もされていないという状態であれば、通常発注先からの要求事項も満たすことはないでしょうから、それを指摘され、自社の業務プロセスとは無関係に「妙な」管理業務が追加されてしまうということになるでしょう。
しかし、その「妙な」管理業務は、仕組みがない現場の業務に合わないだけで、きちんと業務が仕組み出回っていれば、特に妙な指摘ではないかもしれないのです。

さらに、ISO認証を取得しているから、発注先からの監査で指摘されることはないということもありません。当然個別の要求事項が詳細に加わるからです。

では、ISO9001認証取得する意味がないのでは、という結論になりがちです。
当然なくてもいいものではありますが、「仕組みがあること」「それが機能していること」「継続的に改善していること」これは、ISOに関係なく、事業をする上でとても重要なことです。

これを誰からの指摘を受けることもなく、なんの仕組みの型もない状態で、自社だけで、あるいは社長だけで、これを作り上げ、全社員に浸透させることができるでしょうか?

また、業務の仕組みの軸が、ISO認証取得が必須条件という、少し偏ったものが自社に浸透するでしょうか、社員はISOの要求事項を理解し、現場の作業に落とし込むことができるでしょうか。

同じようなものを作っている工場でも、作業者、管理者のスキルも知識も違えば、得意不得意も違います。文化や風土も違えばISO認証取得をしてそれを継続していくことが馴染む工場、そうでない工場は必ず出てきます。自社の「やりたいようにやる」ことが、いちばん生産性がよく、間違いも起こしにくい状態です。それがそのままISO9001認証取得でき、発注先からも指摘がされない状態であれば、それはとてもいい状態ではないでしょうか。

社長は、自社の能力や風土を見極め、どのように仕組みを構築するのがベストなのか、しっかり見極める必要があります。

自社のやりたいようにやっていてもいけません。ISOの言いなりになっても発注先の言いなりになっても都合が悪いはずです。どの方位にも共通する着地点があるはずです。そして多くの場合自社のやりたいようにやっていることが、その着地点を外しています。それがISOが形骸化する大きな原因です。

自社では、10年ほど前にISO認証の審査を初めて受けましたが、それに合わせて業務プロセスを変えたところはほとんとありません。
耳にタコかもしれませんが、ISO認証取得を目的としないことが重要です。

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