ホームページコラム サムネイル画像83

83. 「工場長、会社辞めるってよ」って言われた社長がやるべきこと

社長がいなくても回る工場は
管理者が部下を主役にする
社長がいないと止まる工場は
管理者が自分を主役にする

ある工場の社長が、青い顔をしてこう言いました。
「工場長、会社辞めるってよ」
って工場長以外の社員から聞いたそうです。

その工場長は、工場で行われる仕事の端から端まで全てを把握している人です。生産計画を立て、社員の配置をし、材料の発注を行い、納期の管理もし、全ての取引先とのやりとりも行なっています。生産ラインに並んでいる設備も、何か問題があればすべて工場長が飛んで行って対応しています。

この工場長がいなくなればこの工場は止まってしまうでしょう。
社長もそれをずっと心配しながらも、手を打てずに時間だけが過ぎていました。
そして、社員から聞いた思い一言。
ホントに危機的な状況が目の前に迫る今、何をすればいいかわかりません。また、これまでを振り返っても、その時間に戻れたとしても、いつどんな時にどんなことをやっていれば良かったのか、あまりイメージもわきません。

こう聞くと、社長のこれまでの工場長に対する指示や、教育、指導など社長としてやるべきことがされなかったということも言えるかもしれません。

しかし、この問題は、社長が工場長を工場長に任命する前から、実は見えていた問題なのです。

 

社長が工場長を工場長に任命する時、何を評価して任命したのでしょうか。

多くの中小企業では、年齢=社歴=会社での立ち位置、になりがちです。
したがって、多くの工場では、社歴の長いベテランが管理職になっていて、管理能力があるかどうかが伴っていません。
そして、野球でいう、エースで4番を監督にするのと同じように、現場の作業がなんでもできる人、設備を誰よりもたくさん動かせる人、設備を誰よりも修理できる人、生産に関する知識や技術を持っている人がそのまま上に上がり、管理職になるパターンがほとんどです。

そして、それを現場の社員は何も疑問を持ちません。そうなって当たり前と思っています。
理由は、現場の作業者の「仕事ができる」というものさしが、誰よりも生産ができる、誰よりも設備を動かせるという基準しかないからです。

さらに、現場での作業経験がない人、あってもそれほど生産能力のない人が管理職になった場合、こういう言葉が帰ってきます。

「現場を知らないくせに」

 

このような環境により、自然とベテランが管理の仕事をする、生産できる人が管理職になる、という土壌が安定して出来上がっています。

そして、社長は、だれに工場長になってもらおうかと考えた時、現場が混乱しないように、空気を乱さないように、というような安全な方に判断が寄って行きます。
さらに、規模が小さな工場ほど、管理業務というものが設定されておらず、さまざまな付属的な作業、間接業務も生産業務の一部とみなされ、管理職自体必要と感じてないことさえ起こります。

このように「管理者は何をするのか」が定義されていない状態では、周りの空気に流され、だれもが管理業務がなんなのかも知らないまま、自然に管理職が設定されることになります。

ですので、社長自身も、工場長を工場長として任命した、という状況にないのです。

そして、この時から、「工場長、会社辞めるってよ」へ向かって進むのです。

 

管理者としてあってはいけないこと

このようにして管理者になると、この管理者はある間違いを起こします。それは、

「自分が一番できる」

と考えてしまうこと。

どの社長に聞いても、そんな傲慢な管理者はいらない、管理者として失格、上に立つ人が一番偉いのではない、と言いたくなるでしょう。
それはもっともです。
しかし、工場長になるまでのプロセスがそのように思わせてしまうのです。

そして、このように思ってしまう管理者はどんな管理をするのか。

「あの人はやってくれない」
「あの人は分かっていない」
「あの人に言ったのに・・・」

このようになると、管理者は、
人を信じなくなります
人を育てなくなります。
全部自分でなんとかしようとします。

設備トラブルがあった時の対処は、自分でやりました。
納期遅れになりそうな時は、自分が生産ラインに入ってなんとかしました。
取引先から苦情があった時は、自分が出向いて対応しました。
急な欠勤があった時は、自分が残業して間に合わせました。
・・・

その結果、工場長だけ朝早く来て、夜中まで工場に残り、月に100時間近い残業を行い、自ら疲弊していくのです。

そして、次が一番重要です。

この工場長は、誰にも作業指導を行いません。
すべて自分中心で、自分が動きやすいように業務プロセスを組み立てます。
したがって、工場長以外、全員助手です。助手レベルのことしかできず、工場長がいなければ一つの仕事が完結しないという状況が作られていくのです。

それが、世にいう、ベテラン社員による業務の属人化への流れです。

 

管理者育成が必要、
属人化対策のために言語化が必要、
それにはIT化やAI活用が効果がある、
・・・・

一つ一つは間違いありませんが、それぞれ個別に対応しても、永遠に解決することはありません。

ものには順番があり、必ず原因があるのです。

この原因を作るのは、会社のトップである社長であるということは、どうしても否定できません。
全ての責任を負う立場ですから仕方がありません。

しかし、社長だけが悪いというのもこれも違います。

この工場長には、「人に感謝する」という思考が欠けています。
自分より劣るかもしれませんが、いくら工場長がひとりでがんばっても、24時間フル作業しても、ようやく3人分できるかもしれない程度です。そしてそれは数日も持ちません。工場長より劣っている、見下しているかもしれない社員が作業してくれているのです。それに感謝しなければいけません。

工場長になる能力があるかどうかより、素養の問題です。

そうなると、そんな人を工場長にした環境を作ったのは社長、そんな人を工場長に任命したのは社長・・・。

結局は、社長の経営に対する考え方と意思決定に問題がある、というように、社長に問題があるんじゃないかっていう話が戻ってしまいますね。

 

Book

著者新刊

社員だけで回って儲かる
「工場自動化経営」の3大ポイント

「カイゼン」を超える!自主的に動く仕組みづくりで、工場経営を自動化する。 現場で実践しながら指導する異色のコンサルタントが、空理空論一切なしで解説。

Amazonで見る →

Seminar

中小製造業・加工業のための
社長のAI活用経営法

最小限の投資で、生産性の大幅向上と自動稼ぎ装置化を実現する具体戦略

第1回

2026年 7月21日(火)

第2回

2026年 9月18日(金)

会場:東京・内神田(JCPO主催) オンライン参加対応 即時受付対応

▶ セミナーに申し込む