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64.社員の意見を引き出すために必要なこと

社長がいなくても回る工場は、
外の世界とつながっている
社長がいないと止まる工場は、
社長の世界で閉じている

ある集会での話です。経営者だけの集まりではなく、さまざまな立場の人が集まる場でした。

ちょうどその時期は、ある国がある国に攻め込んだ、攻撃したという、戦争が始まるんじゃないかというような報道がありました。
この話をここに集まる人がどれくらい知っているのかについては、ほぼ全員知っていました。
どのテレビでもネットでもその発信は多くありましたので、みんなの目に触れる機会が多くあったのだと思います。しかし、その数日前から、いつ攻撃があってもおかしくないっていうことは、多くの人がそれを知りませんでした。
多くの人たちにとっては、「あー始まってしまったか」という感じだと思われますが、この集まりの中のみなさんにとっては、突然の出来事だったようです。

いつの間にか陥る危険な状況

この話は、攻撃があったことについてどうこういうものではありません。

この攻撃があってもおかしくないという状況があったのにも関わらず、なぜ知らない人が多くいるのでしょうか、ということなんですが、普段からその国の状況を見ておきなさいというのもおかしな話です。遠くの国で起こっている出来事なので、普段意識が向かないのも無理はありません。

しかし、毎日のように報道されていたことでしたので、私にとってはそれを知らないということをあまりにも情報が入らない環境にいる人たち、あるいは自分の周辺のことにしか関心のない人たちなのかと疑問を持ってしまいました。

こんなに自分周辺のこと以外には関心がない人たちもいるのかと。

経営者だけの集まりではありませんので、どこかで社員として働いている人たちです。
このような人たちがいる会社で、社長が、将来のことや内部・外部環境を考え決定した経営方針を社員に伝えたとしても、これが社長が思っている通りに伝わるのだろうか、という疑問が残ります。
自分の生活、自分の生産ライン、自分が興味のあることにしか関心がなければ、遠くの国で攻撃があっても、それが自分のそれに影響があるかもしれないという想像力が湧くことはないのではないかと考えてしまいます。

同じように、社長が示す経営方針で、どんな将来になるのか、自分はどんなことをしなければいけないのか、それを想像することができる社員かどうか、疑問を持たざるを得ません。

社長が置かれている立場

では、このような社員は、自然に生まれてしまうのでしょうか。

そう考えてしまうと、社員は普段から何も考えていないと断定してしまうことになってしまいます。
しかし社員は、1日の大半を会社で過ごしています。その環境の中での過ごし方、もっと突っ込んで言えば、生産体制のあり方、指示を受ける立場であることなど、いつの間にかそうならざるを得なくなっているのではないかと、社内を見渡してみる必要があるのではないかと思いました。

ある国首相は、選挙で選ばれた国会議員によって決まります。
ある国大統領は、国民による選挙で選ばれます。
またある国のトップは、はじめからこの人の名前を書くよう強制的な投票で選ばれます。
どの方法がよいかどうかは横に置きますが、国ごとにルールがありトップが決まっています。
では、会社の「社長」はどうでしょうか?

社員は自ら会社を選んでいます。
また、現時点で在籍してくれている社員は、ある程度満足しているか、不満はあっても許容している、我慢できる範囲ということでしょう。
その意味では、社員は、この環境を選び続けていると言えるのではないでしょうか。

しかし、社員は、社長を選ぶことができません。
特に、中小零細企業では、社長に任期はありません。定款に書いてあるとは思いますが、だれもそれを知りません。
会社のルールを決めるのも社長、給与を決めるのも社長、方針を決めるのも社長。権力はすべて集中しています。同時にすべての責任も社長にあります。

会社の規模が大きくなれば、株主総会や取締役会などがあり外部から指摘される仕組みも存在しますが、株主は社長とその家族、取締役も同じという会社が多いでしょう。
社員が意見することができるのは良い環境かもしれませんが、そのような仕組みが会社に必要だという法的なルールはありません。
完全に一極集中の意思決定構造です。

これは良いか悪いかの話ではなく、構造上そのようになっているのです。
だからこそ、社長の無知・無関心・視野の狭さは、社員のそれとは比べ物にならないほど悪影響を与えかねないのです。

社長が及ぼす影響の範囲

例えば、遠くの国で起こっていることだから自分の会社には関係ないと思ってしまうように、金属加工の工場だから飲食業のことは関係ないとか、他の会社での労働災害を自分の会社にそんな危険な機械はないから関係ない、などのように、外部で起こっていることを人ごとのように解釈してしまうことがあっては、それは視野の狭い社長だと言わざるを得ません。

そのようなことはないと思っていても、生産現場に入り浸っていたり、客観的な外部からの声、あるいは内部の社員からの声を聞いたりしていなければ、気付かないうちに正しい判断ができない状況になってしまっているかもしれません。

しかし、会社の構造上、強力な権力、決定権だけは持ち続けています。
自分の世界だけで物事を判断する、逃げ場のない独裁構造になってしまっているかもしれません。
このような状況で、正しい決定ができるでしょうか。社員が納得するような将来像を指し示すことができるでしょうか。

そして悪いことに、もしそうなっていたとしても、生産能力が急に落ちるわけでもなく、考える力を持たない社員が残るため退職者が増えるわけでもなく、受注があり納品できていれば事業は続けられますので、悪い独裁者になっていてもなかなか気づくことができないのが現実です。

あなたは、独裁者なみに権力を持つ立場です。会社の構造上仕方がありません。
あなたはその権力をどのように使っていますか?

社員の視野を狭くしていませんか?
あなたの視野が狭くなっていませんか?