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63.社員の価値観と業務の関係について考えるべきこと

社長がいなくても回る工場は、
価値観がブレない
社長がいないと止まる工場は、
感情や印象で判断が揺らぐ

SNSにより発信された情報の利用

最近、Instagramのアカウントを作成し、いろいろな発信を見るようになりました。それまで、娘たちが使っている様子を見て、私には必要ないものと思っていましたし、実際に何に使ったらいいか分からないと思っていましたが、その娘たちが突然何かをはじめたり、なぜそんな昭和のことを知っているんだ?という場面に出くわし、「インスタでやってた」というのがほとんどの答え。

これまで、YouTubeで情報を集めていたことはありますが、今はインスタなのかと知り、なぜインスタなのかと聞くと、「YouTubeは長い」のだとか。
見えているのか?と思うくらいスクロールする画面を、突然ピタッと止めて、動画を見始めます。スマホ画面に1秒くらい映るその情報だけで、自分に必要かどうかを判断している様子。確かにYouTubeでは、このスピード感はありません。

そして、なぜか興味を持った私。
アカウントを作成し、勝手に上がってくる情報を眺めていると、気になる画像や動画の習慣、インパクトのあるキャッチコピーなどがどんどん目に飛び込んできます。

人間、慣れるもので、スクロールしながら確かに情報は確認しています。そして気になるものがあれば止めて見る。
するといつの間にか、止めて見たものと同じような情報がどんどん上がってきます。
気付けば、猫の動画か、経営者向けに発信しているようなものばかりになっていました。

「売上倍増!」「簡単に採用できる!」「離職率激減!」などなど、キャッチーなコピーがどんどん目に飛び込んできます。
そして中には、炎上覚悟でインパクトを狙っているようなものも多く、こんなもの社員が見たらどう思うだろうか、とひやひやしてしまいます。

ある日インスタを見ていると、このセミナーのチラシが社長の机の上にあるのを社員が見たら怒るだろうなあ…と思われるような情報発信がありました。

具体的なコピーは伏せますが、現場が古い体質のままであることを社員のせいにしていたものでした。

確かに、社長が変革を興そうとしたとき、反発が起きるのは当然社員側です。経営側であるはずはありません。そう考えればそのコピーも間違いではないかもしれませんが、それでも社員がそういう構造をわかっているわけではなく、実際に社長が変革の号令を打ち上げれば、社員側では、今まで通りでいられなくなると感じれば、居心地の良さを変えたくない力はどうしても働いてしまうものです。

一方で、変えたくないわけではなく、社長の変革の方針を理解しているはずなのに、でもやっぱり変わらないという社員もいます。

半年後に定年を迎えるAさんの話

ある企業のM社長がこう話していました。半年後に定年を迎えるAさんの引き継ぎの話でした。

「半年後に定年退職をするAさんがいるんですが、そろそろ仕事が部下に引き継がれていないといけないのですが、どうも部下は未だにその仕事をやる様子がないんです。現場だけに任せているだけでは心配だったので、私が引き継ぎの段取りをして管理しようとしたんです。しかし状況がわかってくると、私が想定していなかったことが起きていたんです。」

M社長は、この引き継ぎは、Aさんが社員に歓迎され気持ちよく退職できるよう配慮が必要だと感じていました。
そのため、Aさんの役割を定義し、どこまでできていれば合格なのか基準を設定し、Aさんの業務の引き継ぎが円滑に進むよう生産管理する側も人員配置に配慮し、週一で行われる会議のたびに進捗を確認し、引き継ぐ部下の習得状況やAさんの作業の手離れ具合も確認しました。

引き継ぎ内容もきちんと言語化して、確認できるようにし、漏れがないことにも配慮しました。この手順書通りにすれば問題なく作業が完了するはず、というものです。 そして、引き継ぎができていなかった場合、どこが責任を負うのか。その基準も明確にしました。

人員配置や作業指導の時間が確保できず引き継ぎが進まない場合は、現場の管理者の責任。
時間が確保されているのに、指導をしていないために進んでいないのであればAさんの責任。

引き継ぎが順調に進むよう、このようにルールを決め、Aさんともちゃんと話をし理解してもらい、現場の管理者にもその話の中に入ってもらい、協力してもらうようお願いをしました。 社長は万全の体制を整えたつもりでした。

しかし、実態は、前述のM社長の言葉の通り、部下は引き継いだ仕事をしていません。Aさんが残業をしてまで引き継いでいるはずの仕事をしています。

さすがに、M社長はAさんを呼び、個別にどうなっているのか確認をしました。

するとAさんは、

「私は最後までこの仕事をやり遂げたい」

M社長は言葉に詰まったそうです。
みなさんはこのM社長の立場ならどう返しますか?

社長と社員の責任と価値観

「最後まで自分の仕事をやり遂げたい」 その言葉は、仕事に対する責任感とも、自分の仕事に向き合う価値観とも取れます。しかしそれは、本当に会社のためだったのでしょうか。

「引き継ぎ」とは、ただ仕事を部下ができるようにするためだけの作業ではなく、経営者の立場から考えると「会社の未来を誰に託すかを決めるもの」だと考えなければいけません。

社長も人間ですので感情は持ちます。しかし、その感情のまま判断してしまえば、会社の未来を誤るかもしれません。

そして、SNSでは、強い言葉ほど目に留まります。
「社員が悪い」「古い社員が変わらない」など、確かに分かりやすく目を引くものですが、しかし現実の経営は、そんな単純な構図では片付きません。
社長が感情や強い言葉に流され、判断が近視眼的になってはいけません。

社長の一番の仕事は、事業が継続することです。
そして、これからも会社に残って活躍してくれる社員が、希望を持てる判断をしなければいけません。