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コラム
2025.04.15

30.高い授業料にしないIT導入の進め方

工場の経営者がIT導入を進める際にまず行うことはなんでしょうか? 

ある工場経営者との飲み会での話です。 

長く付き合っているITベンダーに、生産管理システムの導入をしたいと相談にしたそうです。 
長い付き合いなので、信頼している担当者とはなんでも話ができ、現場の状況や仕事の進め方など普段から情報共有を行なっていたとのこと。 
そういう状況もあり、生産管理システムの導入をしたいと相談に行ったときには、迷いもなくおすすめのパッケージシステムを紹介してくださったそうです。 

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生産現場にいくつか端末を置き、バーコードを読み取ることで生産の進捗を登録した り、使用した材料を登録したりしておけば、そのデータがあれば社長は、取引先から の「今どこまで進んでる?」「○日の納品間に合いそうですか?」のような問い合わせ に対し、データを確認するだけで明確な回答ができます。 
出張先からPCで確認できますので、わざわざ現場に電話して聞いたり、現場に見に行 って確認する必要はありません。 
工場内で生産管理する担当者も、営業や社長からの問い合わせが少なくなり、本来の 仕事に集中することができます。 
生産管理システムだけではなく、在庫管理システム、受発注管理システムなど、さま ざまな管理システムがあり、それらが一つになったERPというものもあります。バラ バラといろんなシステムを管理する必要もないですし、バラバラのデータを一緒にす るのが手作業だったり、脳内でつないだりしますので、そのような手間も省くことが できます。 
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社長は、ITベンダーの担当者から、システム導入のメリットをたくさん聞いたことで、業務の効率化につながり、受注を増やすことができそう、というイメージを持ち、システムを発注したのでした。
 
それから数か月、社長の方からシステム導入の状況について相談がありました。
今回は、飲み会の話の中ではなく改めて相談されましたので、間違いなく何かがあるなと。 

そして約束の日に訪問したところ、厳しい顔をし現場を見せてくれました。生産管理の担当者に案内され使用状況を聞かせてもらい、話の流れからサーバー室を見せてくれました。 
すると驚くような光景を目にしたのです。 

なんと、導入したばかりのバーコードリーダー端末が山積みにされていたのです。梱包されたままのものもたくさんあります。
そういえば、現場を見せてもらったときに数個ほど端末が作業台の上にありましたが、その生産ラインは動いておらず、ということはこの端末はなぜここにあるのか?と思っていたところでした。 

案内をしてくれた担当者から聞くと、声の大きいベテラン作業者が「作業の邪魔になる」と言って入力しなくなった途端、周りの作業者も同様に入力しなくなったのだそう。 
同じように作業の邪魔になると思った者、上からの指示だから入力は必要だと思いつつ入力していると作業の手を止めるな、と注意されやめていく者、あの人も入力していないから自分もしなくてもいいだろうとやめていく者、いろいろな理由はありますが、遂にまったくだれも端末を使わなくなったそうです。 

では、社長はPCから情報が得られないから、出張中に現場の状況を確認するのが大変なままなのでは?と聞いてみたところ、いちいちPCを開くのが煩わしく、電話の方が早いから。とのこと。 
現場の作業者も社長からいちいち電話がかかってきたら対応するたびに作業が止まり、非効率じゃないですか?と聞いてみるも、そう思うこともあるけど、データ入力は作業するたびに毎回手を取られるし、電話の方が早いから気にならなくなったと。 

社長でさえ、数百万円も投資したことも忘れたのか、元の作業の方が効率が良いという始末。 
人の能力、慣れというものはすごいものです。 
 
このような件、この社長だけの話ではなく、本当に多くの企業で起こっている現象です。 

社員の皆さんにとって、システム導入が利益につながらないと判断されてしまっています。 
その利益とは、社員の皆さんにとっての「損得」のことです。会社の利益にならないと思ったからと言ってやめる、あるいはやらない社員は間違いなく0です。自分に都合が悪いのでやめたというだけの話です。 

社長もITベンダーの説明に納得して購入しているはずなのに、自ら率先して?システムを使わなくなっています。社員とは違い社長は会社の利益は絶対に考えているはずです。それでも数百万の投資がムダになっているにも関わらずなぜ簡単にやめることができてしまうのか? 
それも、使い続けることの方が損、と思ったからです。とても当たり前のことなのですが、しかし導入前にこの判断をして購入を踏みとどまることができるのか?・・・ 

ITベンダーから多くの成功事例を聞いていても、まさかそんなに簡単にいくはずがない、と考え、別で失敗事例もたくさん聞きます。すると今度は、自分のところなら大丈夫そんな失敗はしないように気をつければ良い、と楽観的な発想が湧いてきて、そして同時進行でITベンダーさんから「社員さんが使えるようになるまでしっかりフォローしますので!」という言葉で安心して買ってしまう・・・。 
この流れを聞いていても、わかっていても買ってしまう。
この会社をなんとかしたいという思いが強ければ強いほど、やっと見つけたなんとかできるかもしれない手段、システム導入すればうまくいくかもしれないと可能性に賭けるのです。。 
 
一旦電話を切り落ち着いてから本人にもう一度掛け直す、なんだか騙されないためのなんかの対策と同じようなことを言っているような気がしますが、一旦ここでもう一度考えてみていただきたいのです。 
 
そのシステムを使うのは誰ですか?その人たちの本来の仕事はなんですか? 
システム導入で利益が出るかもしれませんが、その時に会社は良くなっていますか? 
 
もう一つ質問です。
導入のきっかけが、補助金があるならやってみよう、ではありませんか? 
補助金をきっかけにして導入することで一番悪い終わり方があります。それは、 
 
3分の2は返ってくるし、少し高い授業料だったと思えばいい、という社長の思考です。 
そんな考え誰も理解してくれませんが、社長の感情や精神的なことを考えればそう考えてしまうのも仕方のないことです。
 
この社長には、このようなシステム導入の失敗しないための準備について、説明させていただき、結果的に「生産管理システムを導入しないシステム導入」を実現させ、会社から離れていく社員を引き止めることにもつながったのです。 

社長は、これこそが失敗から学ぶということなのでしょうか。しかし初めからそうしておけば高い授業料全て口座にキャッシュとして残っているのかと思うと複雑そうでした。 
まだリース代は残っています・・・。
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