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コラム
2024.12.17

15.会社の能力を最大限発揮する方法

今回は、ある飲食店の話です。
先輩社長と周辺地域の飲食店の話で盛り上がっていました。

家族で行くお店、友人と行くお店、ひとりで行くお店。仕事柄、取引先の方が来社されると、昼ごはんに行ったり、飲みに行ったりすることもありますから、そのお店選びは少し慎重になったりします。

その話の中で、「最近、あの店の店主の対応が悪くなったよねー。いくら旨くてもあの対応されるとちょっと考えちゃう。しかも、主婦層からはものすごく評判悪いみたい。」・・・。

店主は、ものすごく腕の良い料理人で有名です。いつ行っても行列ができていて、繁盛してるようにしか見えませんでした。しかしいつしか店主のお客さんに対する対応が明らかに悪くなってきて、ただ黙々と作業する職人、というより作業者になったようでした。

主婦層は、味が良いのは当たり前で、腕があるかどうかより、その時間を心地良く過ごせたかどうかが重要なようでしたので、余計に目に付くところとなっているのでしょう。

「美味しかったけど、スミマセーンって声かけてあんな顔されたら、もう次はないって思っちゃう」とのこと。

ある時、そんな店主と同業の友人に会い話す機会がありました。
聞けばその店主、「あまりの忙しさで、自分が納得できるだけの技術を提供できないことがとても辛かったみたい。近くにライバル店ができたのですごくホッとしてたよ」

通常、ライバル店が近くにできれば、お客さんの奪い合いになる、売上が下がるのではないか、と不安になるものです。しかしその店主は、ライバル店ができることを喜んでいたのです。

「お客さんが分散して、余力ができるので、自分のやりたい仕事ができる」

ライバル店ができ、そのお店にも行列ができました。当の店主のお店は明らかに行列が短くなっていました。傍から見る主婦たちの「やっぱり、あんな態度で仕事してたら、お客さん逃げちゃうよねー」という反応とは裏腹に、店主は生き生きとして仕事をしはじめたのです。

この話を聞いて、工場の中でも同じようなことが起こっていませんか?ということです。

売上を上げなければいけない、と社長ががんばればがんばるほど、現場の社員に負荷をかけ勤務時間は長くなり、残業時間は月40時間どころか80時間、100時間を超え、それでも真面目な社員ほど、せっかくの仕事だからと必死でがんばってしまいます。

これが世間でいうブラックな状態を作り上げてしまい、過労死につながってしまうのでしょう。そこまでにはならなかったとしても、社員のプライベートは完全に無くなります。
そんな状況では、イヤな顔もしたくなるでしょう。普通の顔のつもりでも血相も顔色も変わってしまっています。
そこへ来て、別の社員が「あの人、最近態度悪いよね。何を頼んでもイヤな顔されるし、頼んだことは後回しにされるし」・・・。
そんなことを言う社員に限って、ちゃんと定時に帰っていたりしますので、長時間残業時間してる方は、そりゃあ腹も立つでしょう。

この状況、どのように脱出すればよいでしょうか。

今回は前述でブラックな状況を説明していますので、パワハラだけが問題ではないことは誰でもわかるかと思いますが、通常、社長のところには苦情しか情報は入ってきません。
そして、その苦情を言ってくるのは、長時間の残業で気力も体力も続かないと、前者社員が言ってくるのではなく、その社員に嫌な顔をされた余力の十分ある後者社員です。前者が苦情を言うときには、最後の余力を振り絞って退職を申し出るでしょう。

売上目標や生産性向上目標を打ち出し、その指標だけを追いかけている管理状態であれば、労務管理をしていて長時間労働の事実は把握していたとしても、数値化できないそのような苦情があるまで、現場の実情はわからないものです。

現場の情報として先に入って来た苦情を鵜呑みにし、長時間残業している社員にパワハラに気を付けるよう注意してしまったときには、収集がつかなくなるような状況になりかねません。

対策として、少し長い時間軸で考えると、負荷の高い社員が行っている作業を、他の社員にも指導するなど対応が考えられるでしょう。
この対応により、特定の社員だけが長時間労働にならないようにすることは可能ですが、経営者として、それより考えなければならないことがあります。

工場の生産能力と損益分岐点です。

自社の工場の生産能力を把握した上で、売上目標を設定しなければいけません。単純に昨年度比10%アップ、などとしていないでしょうか?
売上額が損益分岐点を超えてからが利益が出始めます。ここから先を「できるだけ多くの利益を・・・」と設定することなく、ゴールもなく社員にがんばらせていないでしょうか?

前述の飲食店の店主は、1時間当たりにさばける客数、それによる売上額、何杯以上を売り上げれば利益が出るのかなど、経営上の数値を把握していたため、お客さんが減っても喜んでいたのです。
もしこの店主が、これらのことを把握せずにお客さんの数をこなすために、対応できる社員を増やしたり、設備投資をしたりしていたらどうなっていたでしょうか?
損益分岐点がどんどん上がり、売上の割りに支払いがどんどん増えて、がんばっているのに儲からない、負のスパイラルに入っていたかもしれません。

材料費、光熱費、人件費など様々な経費が上がっていっている中、何の作戦も経てず、時間延長や社員の「がんばり」だけで収益が良くなるはずがありません。
まずは、自社の状況を把握し分析が必要です。社員のがんばりに甘えていてはいけません。
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