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コラム
2024.12.10

14.組織変革を成功させるための管理職の適性評価

「もう、あの管理職が全く機能しないんですよー!」
とある工場の社長からの相談?です。
工場に訪問し、会議室で待っていた私のところに、社長はイライラしながらやってきました。

いつも通りと言えばそうなんですが、コンサルティングに入って組織変革というテーマの下、管理業務の整理を行っている最中で、良い方向に向かおうとしていた管理職3人。そのうち1人が、決めたことを無視してこれまでの古い慣習のまま業務を進めていたらしく、それが元で3人で進めていた取り組みがストップし、その結果現場への適切な指示を出すことができず、現場が混乱してしまったとのことでした。

どんなに綿密な打ち合わせをして業務の進め方を決めていても、予測しない出来事やうっかりミスによりトラブルが発生することはあるものです。今までと異なる進め方で作業をしなければならない状況ではなおさらです。

現場が混乱してしまったことが問題ではなく、全管理職がこれまでの業務の仕方を改めようとしているところで、従来の方法に固執してしまう管理職個人の仕事に対する姿勢や与えている業務への適性の問題ではないかと考えざるを得ません。

受注量が上昇傾向にある中、それに十分対応できるようにするために、これまでの古い慣習で出来上がっていた組織風土を変革し、新たな管理体制を構築し強化するという、社長の今年度の重要取り組み事項であったため、この管理職の対応には非常に頭に来たようです。

少し落ち着きを取り戻した社長とコーヒーを飲みながら、これまでの経緯を振り返りました。
社長は、このような状況になったのは自分に責任があると常におっしゃられていました。 

その責任とは、管理職に適性があるかどうかを考慮することなく、また管理職の業務を明確にすることもなく、生産業務をよく知っている社歴の長い社員を、半ば自動的に管理職にしたこと。その人事に責任を感じているとのことでした。

世間一般に、「名選手、名監督に非ず」という言葉があるくらいですので、選手の仕事と監督の仕事はそれだけやることも違い、必要な能力も違うということです。

工場でも同じで、生産で使われる設備や道具のこと、金属や樹脂の性質、それらの技術的なことなどに詳しいからと言って、その部門の長となって方向性を示し、チームのマネジメントが行えるとは限りません。むしろそのような能力を持つ作業者の方が珍しいことかもしれません。

今考えれば、業務内容や必要な能力を明確にしたり、評価基準を明確にしたり、その業務を遂行するために必要なスキルを身に付けるための教育の機会を与えるなど、やらなければならないことがたくさんあったと社長は振り返りますが、該当の管理職ももういい年です。今からその管理職の教育をして管理力を発揮してもらおう、という気にもならないようです。そもそも、そんな人間ではないと。
私も、それよりその時間とお金を新たな管理職育成に向けましょうと話をして、社長と今後の方向性について確認をしました。

組織変革を行おうとしている今、新しい会社になろうとしているわけで、古い慣習のまま変化しようとしない社員を管理職として在籍させることは、社長の方針に対して社長が行っている人事に齟齬があることになり、社員に間違った発信をしてしまいます。

しかし、小さな工場ですので人材が豊富なわけではありません。大きな会社の人事異動のように、今すぐ交代、というわけにはいきません。候補が見つかっても管理職としての仕事ができるように育つまでには、それなりの時間を要します。
したがって、そのような「適性のない管理職」でも、次の管理職が育つまで、「それなりのことをやってくれる管理職」として在籍してもらう必要があるのです。

組織変革とはいろいろな問題が起こるものではありますが、問題が起こることがわかりきったことをするべきではありません。そのような状況を作れば社長の采配に問題があると社員は感じてしまい、組織変革が良い方向に向かうものではなく、自分の居場所がどうなってしまうかわからないものと解釈されてしまい、協力体制が得られません。問題を最小限に抑え、自然の流れで新しい組織風土が作られていく方が長続きします。

この工場の組織変革が成功するには、新しい管理職が育つのが先か、適性のない管理職を登用したまま社員が組織変革に関心がなくなるのが先か、この2つのプレッシャーとの戦いです。

まず取り組まなければならないのは、変革の方針通りに動いてくれている管理職のフォローです。社歴が長いからと言って特別扱いはしないことは明言しておく必要があるでしょう。

そして、社歴の長い管理職を含む管理職全員で、管理職業務の洗い出しと役割分担を明確にすることです。本来、役割分担を明確にする前に、新しい業務の流れを構築するべきですが、社歴の長い管理職は多くの場合それに対応できません。今までの自分の仕事のやり方を自分で否定することになるからです。それによって業務を放棄されては目先の業務が回らなくなるため、業務の流れの大きな変更はしない方がいいでしょう。

その間に、管理職の会議の中に現場の社員を投入します。
表向きは、現場の様子を聞くことを目的としますが、本来の目的は、新たな管理職探しです。会議の中で新しい業務の流れを模索します。
組織変革に賛同する社員であれば、管理業務についてこれまでのやり方を変えることに異論はありません。その状況を利用して、組織変革に進む力を強めていくのです。
そうすれば、考え方が古いままでは会議についていくことができず、自然と発言もなくなり管理職から外れてもらいやすくなるでしょう。 

これは組織変革を行うための新しい管理職探しの一例です。方法はこれだけではありません。
また、適性のない管理職を外すことで組織変革が完了するわけではありません。あくまでも変革プロセスの1工程です。
大切なのは、組織変革の先頭を引っ張るのは社長ということです。そして全体を見渡して間違った方向に進まないようにするのも社長の役割です。どんなことがあっても組織変革を実行して良い会社にするという熱量は誰よりも持っていてください。
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