新着情報

News

キービジュアル
コラム
2024.11.19

11.「社員が育たない」と思うときに考えるべきこと

会社を経営しているどの社長に聞いても「社員が育たない」という悩みは出てきます。
事業を進める上で一人でも社員を雇っていれば、その社員が何かしら業務を進めているわけで、そこで問題が発生すれば、設備や材料や手順に問題があったとしても、どれも必ず人が関わっていますので、最終的に「原因は人」ということになってしまいます。

たくさん販売して売上を拡大するのも人、生産性を向上して経費を削減するのも人、その技術を持っているのも人、このようなことを誰もが知っているから、社員を育てなければいけないということは重要な事項として考えているのでしょう。なにかしらの取り組みはされているのだと思いますが、社長が集まれば「社員が育たない」・・・という愚痴や悩みはたくさん出てきます。

今回はこの言葉について考えてみたいと思います。

まずは、社長と社員はどのようのコミュニケーションを取っていて、そのコミュニケーションの結果がどうなるのか?を考える必要があります。

ある業務を実行するに当たり、その作業指示を出したり、進捗を確認したりするようなことは業務上必要なやり取りですので、そのレベルのコミュニケーションは取っているものと思います。

このやり取りを続ければ、社員は「社長が思うレベル」まで到達するでしょうか?

言い方を変えると、このやり取りは一般的に「OJT」と呼ばれるものです。社員の成長のために必要な訓練であることは間違いありませんが、「社長が思うレベル」と成長の到達点を設定したときに、ズレが生じませんか?

「OJT」で身に付くことは、あくまでも業務遂行に関する部分です。これができなければその業務や役職を続けられない、最悪の場合雇用継続も難しくなる状態になるでしょう。
したがって、「社長が思うレベル」とは、OJTの内容は最低限身に付けた上で、それ以上の部分を言っているということになります。

では、「それ以上の部分」とはどのようなことでしょうか。

生産現場の作業について、設備を1台動かせるようになったから次は2台、3台と動かせるようになるとか、A製品の生産ラインの業務を身に付けたので、次はB製品の生産ラインができるようになるというのはOJTで身に付けていく部分ですので、「それ以上の部分」には当てはまりません。

通常業務ではない部分、例えば、設備で発生したトラブル対処、不具合品が発生したときの対処など、これらも基本的にはOJTで身に付けていきます。

では、「OFF-JT」でそれができるようになるのでしょうか?

「人材育成が必要」と考える経営者の中に、現場で不足している○○の技術を身に付けるために、その技術を身に付けるためのセミナーや研修に参加させるとか、管理職が不足しているので管理職研修に行かせるとか、多くの企業が行っています。

これら研修などのOFF-JTで、「それ以上の部分」が身に付くでしょうか?社長が思うレベルに到達するでしょうか?

残念ながら多くの場合、会社から行くように言われたから参加した、管理職になるには会社規定で参加が必須なので参加した、のように、自ら参加したのではなく、ルールだから、必要に迫られて仕方なく、という参加の方が圧倒的に多いです。
この参加の仕方の時点で、おそらく社長が思うレベルに達していないことと思います。自分が行かせないと学ばない、自ら成長しようとしていない、という愚痴が出てきます。親の心子知らずとはこういうことかもしれません。

要は、「社長が思うレベル」「それ以上の部分」の大部分に、社員が自らの意思で行動するかどうか「自主性」があるかどうかを求めているということが言えないでしょうか。

社員のことを「言ったことしかしない」という愚痴も多く聞きます。これは社員の自主的でない行動の具体例です。
「自主的」であるかどうかの議論は昔からなくなることがありませんが、その自主性のなさは、社員のレベルの低さなのでしょうか?社員にやる気がないからなのでしょうか?

実際に社員がやる気を持ち合わせていないこともあるかもしれませんが、原因を人のせいにしていては何の解決にもなりません。経営者としてできることは何かと考えると、社員が自主的に動くことができる環境を作ることができていないのではないか、と確認が必要だと思っています。何が社員のやる気をそいでしまうのでしょうか?なぜ自主的に動いてもらえないのでしょうか?

社長が思うレベル、それ以上の部分までできるようになりたい、と思う社員は必ずいます。しかし、そう思っていても何をどうすればよいのかわからない、これをやればいいのかなぁとイメージはできるけど行動にまで移すことができない、という社員は意外と多いものです。本来、自主性のまったくない人などいないはずです。

例えばクレーム対応の際、OJTレベルで身に付けたことは、業務上必要なことですので、一定程度の処理能力があればこなすことでしょう。しかし、クレームの場合は、クレームを言ってきたお客さんとの対応も含まれてきます。毎回同じお客さんにクレームの対応をしていればどのように対応すればよいか身に付いてくるかもしれませんが、そのような場面はまずありません。一発勝負です。
その場の判断でお客さんに満足してもらうことができる対応ができるかどうか、OJTで学んだ通りにすればどのお客さんも同じように満足してくれるわけではありません。

ではどのような対応をすればよいのか、その場面に出くわした社員は、何を基準に判断すればよいのでしょうか?

それは、「価値判断が必要な場面」に経営者が思う価値判断と同じ判断ができるかどうか、ということではないでしょうか。経営者が思う、この会社でこの事業を進めていくためには、これを基準に判断をしていかなければならない、という「価値観」を示す必要があります。
これが示されていなければ、社員のこれまでの人生で積み重ねてきた自分の中の常識から作られる価値観で判断するしかありません。社員にとってはこれが社長の判断基準と同じなのか不安なのではないでしょうか。

そして社長から見える姿は、迷った末にやらなかったことが、自ら考えて動こうとしていない、として見えてしまい、「育っていない」と評価されてしまうのです。育っている社員がいるとすれば、個人的な価値観がたまたま社長の価値観と似ていて、エイヤーと行動できてしまう社員でしょうか。そんな社員はなかなかいません。

事業を進める上で判断基準となる価値観を、社員に示していますか?
もしかしたら、「できる社員」はもっといるかもしれません。

 
PDFを開く

一覧に戻る