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コラム
2024.10.08

5.5Sは定着しなければならないのか?

今回は、10年近く前、製造業の経営者をしていながら、製造業の経営者のみなさんから反感を買ったけど、この内容をIT企業の社員さんと話をしていたら、「製造業やばっ!」って言われた内容です。

数年単位で昔の話になりますが、まだ、工場の社長としての仕事を始めたばかりのころ、工場は5Sができていなければならない、という慣習に従い、社内でその活動をしていた頃の話です。5Sコンサルタントを呼び、生産ラインもすべて止め、全社員を巻き込んだ5S活動を学ぶ機会を作りました。

その時に印象に残った言葉が2つあります。

ひとつは、「5Sが定着しないのは経営者のせい」
なんでも経営者にせいにすればよいと考えているのか、このコンサルタントの素質を疑いました。コンサルタントの言う5S活動の進め方を聞いていると、「あーなるほど、結局経営者のせいになるね」ということが分かったのですが、この件は機会があれば後日書きたいと思います。

もうひとつは「成果が出ればそれがモチベーションとなって継続につながる」というもの。
5Sコンサルタント自身が、「5Sの継続は難しい」と言っていました。自社の社員の様子と照らし合わせると、確かにやりたくなさそうな顔。継続は難しいのだろうなあと思いましたが、何の成果が出ればモチベーションとなるのか悩みましたが、自社のやってきた5Sの成果は社員のモチベーションにならなかったということは理解しました。

常識になっていることと思いますが、5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾。
整理して不要なものをなくす。整頓してモノを取りやすくする。清掃して綺麗にする。それを継続、定着させる・・・。結果仕事がしやすくなる、作業効率が上がる・・・。

みなさんは、これが社員のモチベーションになると思いますか?

整理・整頓・清掃をしてやっと仕事ができる環境になります。家ならやっと普通に健康的に生活ができる環境でしょうか。家なら必ず掃除や片付けをすると思いますが、それは住む人が掃除をすることで成果を感じ、その成果がモチベーションとなるから掃除と片付けを続けられるのでしょうか?
おそらく掃除と片付けは、歯磨きや髭剃りの様にやらなければならないことだから継続しているのではないでしょうか。

家と工場は違うと言われますが、家に住む人が工場で働いているわけで、同じ人が工場に出勤した途端、人が変わった様に掃除と片付けにモチベーションを感じるとは思えません。

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少し話が変わりますが、10年ほど前に、5S活動に注力しているという企業さんの見学に参加させていただきました。同日に複数の企業が参加していて30名くらいいたでしょうか。

案内をしてくださる社員さんの後をゾロゾロとついて行き、50人以上は入れそうな会議室に集まりました。最初に工場長さんからどんな5S活動を行なっているのかについて説明がありました。説明する工場長さんのとなりには、あまり身だしなみが整っているとは言い難い、少しくたびれた背広を着た50代くらいのおじさんが座っていました。失礼とは思いながらもこの会社の役員さんかなぁと思っていると、「5Sコンサルタントの○○さんです。」と紹介がありました。

これは失礼しましたと思いながら話の続きを聴いていると、
「弊社では、5Sコンサルタントの○○さんに、10年前から来てもらいそれ以来継続して5S活動に力を入れています」
という説明がありました。

みなさんは、このフレーズを聞いてどう思われるでしょうか?

製造業は5Sが大事。だから10年間もそれに注力して継続できているのはすごい、という反応が、私の周辺から聞こえてきました。

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突然ですが、私の前職は医療関係でした。その当時、5Sという言葉はありませんでした。

心電図検査の時、ベッドが汚れていれば患者さんは寝るのも嫌でしょう。採血台が片付いていなければ、採血の時シリンジを間違えてしまうかもしれません。そうなると目的の検査ができません。他人に間違った投薬をする誤診につながるかもしれません。汚れていれば、片付いていなければ簡単にイメージできることですので、5Sという言葉がなくても当然の様に、整理整頓清掃は行われていました。

医療現場だから当たり前だ、と言われたこともありますが、この言葉は、製造現場なら別にできてなくても問題ないのか?ということになってしまうので言ってはいけません。

工場見学の話に戻しますと、この工場では、10年間もコンサルタントに来てもらわなければ整理・整頓・清掃ができないのか?と思ったのです。

そして、効果とモチベーションの関係の話に戻しますと、コンサルタントに10年も継続して来てもらわないと続かない?のであれば、その間、ずっとモチベーションが上がる様な効果がなかったということです。これは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の効果は、モチベーションにはつながらないという証拠になってしまっていないでしょうか。

私が思うに、5Sはダイエットと同じですね。

がんばって痩せよう!、と運動したり食事制限をしたりして、−15kg達成したとします。これだけの成果が出ればものすごいモチベーションになって継続できると思いませんか?それでもリバウンドしてしまい、その結果今では+10kg・・・。それでも効果があったからまたやってみようとは思いません。そこまでの過程が辛かったから・・・というのは今の私です(泣)

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これが工場見学の感想です。

みなさんは、それでも5Sを続けますか?
掃除と片付けで良くないですか?

設備の日常点検はその時の効果はわかりにくいけど、やらなければならない、やらなければ心配だから継続していませんか?モチベーションが高いから継続できている、ということはないはずです。整理、整頓、清掃もモチベーションに関わらず、やらなければならないことではないでしょうか。

「5S」をやろうと決めて「思ったような」効果が出ない状況が続いているのであれば、いつまでも社員が拒否している5Sを続けるのではなく、社員がやってみようと思う様な他のプロセス、他の方法で同じ結果を探すべきではないでしょうか。

そして最後に、「5S」について強烈に思うことがあります。
「整理・整頓・清掃・清潔」ここまではわかります。必要です。

最後の「躾」。

「躾」って、子どもやペットにするものであって、社会人になったいい大人で躾をされたいと思う人、絶対にいないと思います。それが「整理・整頓・清掃」の定着を阻害している真因だと思っています。


工場見学によってこのような思考が身に付き、後の工場経営の基本的な考えに大きな影響を与えてくれました。

そして、私が経営している工場では、「5S」をやめて、「掃除と片付けと問題解決」を始めようと言った途端、社員の暗い顔がパッと晴れたのを今でも覚えています。もちろん効果も出始めました。
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