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コラム
2024.09.17

2.いろいろ値上がりする前にやっておかなければいけないこと

今回も、ある工場の工場長との会話の一部です。

「受注単価はなかなか上がらないのに、電気代やら資材の仕入れやら設備の消耗品やら、なんでも高くなってなかなか利益が出ませんね〜。」
ロシアのウクライナ侵攻以降、日本中の工場だけでなく、家庭でも全く同じようなことを言っていますね。給与が上がれば、衣食住にかかるモノの値段が上がっても十分買うことができるのでしょうし、受注単価が上がれば、資材や光熱費、人件費など製造コストが上がっても、十分利益が出る、というのが政府の考えだと思いますが、その理屈は、仕入れコストをコントロールでき、給与がどんどん上がっている大企業にしか当てはまっていないようで、中小企業ではなかなかその実感がありません。

平均給与がこの30年上がっていない、デフレという状況が続いていました。経済が成長していないといえばそうなのですが、これだけ長く続くということは、実際に経済を動かしている経営者やその社員で構成される国民にとって、実は都合がよかったのかもしれません。海外の金利はどんどん上がっているのに、日本では国民の様子をうかがってなかなか金利が上がらないのがその証明のような気もします。

今まで事業が継続できている企業のうちいくつかの企業は、世の中が不景気だったから、経費は安くて済む、給与も上げなくても良い、というとても負担の少ない状況で経営ができていたということになります。社員目線で考えれば、生活水準を上げず贅沢さえしなければそこそこ生活できる、田舎暮らしをすれば家賃も物価も安いしそこそこの給与があれば十分、ということでしょうか。

しかし、会社経営については、これからは同じやり方では危険かもしれません。

田舎では人材不足、田舎でも賃金上昇という政策により、人は集まらないし費用も増える。金利上昇することが確定し、借入があれば返済利息も増えます。改めて、現在の経営状況と経営環境の確認が必要な時ではないでしょうか。

経営状況とは、
1.         売上上昇:利益上昇
2.         売上上昇:利益減少
3.         売上減少:利益上昇
4.         売上減少:利益減少
とこのようなざっくりしたもので良いと思います。

経営環境とは、
5.         なぜ売上が上昇しているのか
6.         なぜ売上が減少しているのか
7.         なぜ利益が上昇しているのか
8.         なぜ利益が減少しているのか
こちらもこのようなざっくりしたもので問題ないでしょう。

経営状況が良くても悪くても、なぜそのようになっているのか原因を知ることが大事です。
こんなことはどこの社長もわかっていることと思いますが、次のようなサイクルに陥る社長を度々見かけます。
9.         売上が上がっているから、利益が出ているから、今のままで大丈夫
このパターンは多くの場合、経営理念や将来的なビジョンがありません。今を生きています。

10.     売上が少ないからすぐに何かを売りにいく、利益が少ないからすぐに経費削減をする
この行動は、そうなる原因を分析しないですぐに直感で行動に移してしまうパターンです。しかも社長の独裁で。社員がついて来ないか、何も考えずに言われたことをする社員が残ります。

11.     売上少ないけど、利益少ないけど、今は我慢の時期と静観する
成功体験によりこのようなことが起こります。過去にそれで良かった経験があるのでしょう。ベテラン社長によくあるパターンです。

社長の行動パターンのように詳細を書き出してみましたが、どこの経営コンサルタントでも決算書を見ればこれくらいのことはわかるでしょうし、そのような「診断」をするでしょう。
では、世の中の社長は、なぜそんな分かりきったことをやってしまうのでしょうか?

それはやはり「社長はその会社の経営をしている当事者だから」ということしかないと思います。

どんなに優れた経営コンサルタントでも、その会社の経営に主体的に関わることはあっても当事者ではありません。9回裏、2アウト満塁、3ボール2ストライク、3塁ランナーを還せばサヨナラ勝ち、というハイプレッシャー状況に置かれているのは、そのバッターボックスに立つバッターだけです。監督もチームのメンバーも見ること応援することしかできません。社長とはそういう立場なのです。

野球であればその背筋の凍る様な状況を楽しむ選手もいるかもしれませんが、背筋の凍る様な経営状況を楽しめる社長はよほど優れた経営者か変わった人でない限り、そうはいないでしょう。
その様な経営状況になる前に手を打っておかなければいけません。と「診断」を受け「アドバイス」をされると思いますが、それでも、どんなに手を打っていても背筋の凍るような経営状態に陥ってしまう可能性は誰にでもあります。

その様な時に、冷静に自社の状況を把握し分析することができ、分析結果から冷静にその時の最適解を出し適切な経営判断を下すことができなければいけません。
この経営判断を下すときに必要なのは「診断」「アドバイス」・・・でしょうか?

背筋の凍る様な経営状況の時に、社長が現場に入って現場のマネジメントをしていたらどうでしょうか?社長の指示がなければ社員が動くことができないとしたらどうでしょうか?社長の指示は社員にわかりやすい指示になっているでしょうか?社長がその様なことに時間を奪われていては、経営判断を下すこともできず、時間だけが過ぎていきます。イライラが滲み出た指示が出され、社員は言ったことしかやらず、自分がやった方が早いとまた現場に行く・・・という負のサイクルがイメージされます。

平時ほど生産以外の時間を確保し、現場は社員だけでも回る仕組みを構築しておかなければいけません。今、会社が存在しているのであれば、過去に厳しい状況を乗り越えた経験があると思います。その時になぜ乗り越えられたのか、仕組みなどなく社長や特定の優秀な社員のその場の対応により乗り越えられていたとしたら、それを具体的にし、属人化したものではなく会社全体で取り組める仕組みに置き換えておくことは、危機的な状況に対応するために必要な準備ではないでしょうか。
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