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65.現場が気になって仕方がない社長がやるべきこと

社長がいなくても回る工場は
社長が自分の未来を決められる
社長がいないと止まる工場は
会社で自分の身を削る

紙加工工場の現場の様子が、急に慌ただしくなりました。
どうやら、1週間前に出荷した製品の中から、クレームが発生したようです。

社長は「ここは自分が対処しなければ取引先に迷惑をかけてしまう」そう言って慌てて現場に出ようとしましたが、私はいくつか社長に確認し、そのあと現場に行ってもらいました。

コンサルティングの最中にこのようなことが起こることは珍しくありません。
稀に、「ごめん、今日はそれどころじゃない」と中断をお願いしてくる社長もいます。
しかし私も、社長からの依頼で仕事できていますので、はいわかりましたとそそくさと帰るわけにはいきません。

また、このタイミングこそ、実際にどのような仕組みを作れば社員だけで対応できるようになるのか、実例を踏まえて説明できる良いチャンスなのです。

社長は、私がお願いしたことだけを現場で行い、事務所に帰ってきてもらいコンサルティングの続きを行いました。
そして、再度確認します。

「社長、いつまでがんばれますか?」

社長が現場に入らなければいけない理由

東京商工リサーチの「2025年 社長の年齢」調査によると、日本の社長の平均年齢は、2025年時点で63.81歳。
常に前の年を上回っているようです。
そして、製造業に限ると63.85歳と、様々な業種の中でもトップクラスです。

(出典:東京商工リサーチ 2025年「全国社長の年齢」調査)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202611_1527.html

事業をだれが引き継いでくれるか、これはパターンが決まっています。
息子というパターンがいちばん多いと思いますが、娘、妻あるいはそれ以外の親族というパターン。
二つ目には、長く働いた役員や従業員の中からというパターン。
最後に、社外の第三者、というパターン。
これしかありません。

(出典:事業承継・引継ぎ支援センター 事業承継時期別の現経営者と先代経営者との関係)
https://shoukei.smrj.go.jp/problem_background.html

息子は高校を卒業して都会に出てしまってもう帰って来ない、という話はどこにでもあり、
また、社長自身が、息子たちにこんな大変で儲からない仕事をさせたくない、
ということを考えていることもかなり多くあります。

そして、社外の第三者というパターンが最近増えているようですが、息子にも引き継がせられないような会社、そう簡単に欲しいといってくれる人はいないでしょう。
クレームが発生しただけで社長が走り回らなければならないような工場であれば、なおさらです。

事業承継できた社長は、全体の3.75%で約53,000人。(厳密には、社長交代できた件数)

(出典:帝国データバンク 全国「社長年齢」分析調査(2024年))
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20250325-presidentage2024/

廃業・解散した企業は、約67,000社。

(出典:東京商工リサーチ 2025年「全国社長の年齢」調査)
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202611_1527.html

事業承継、社長交代できずに廃業・解散した企業の方が多いのです。

事業承継以前の問題

社長の仕事を誰かに引き継ぐといえば、事業承継の話になってしまいますが、
それ以前に、社長が現場で行っている作業さえ、社員に引き継ぐことができていないということがないでしょうか?

「社長って、普段何をしているの?」
「社長が採用してくれないから人手が足りない」
「そのせいで作業が増えているのに給与は上がらない」
「社長、手が空いているのなら現場に入って」
という現場の声。

一方社長は、
「社員にはいつも説明しているのに、全然自分でやろうとしない」
「頼んでも、伝えたとおりになっていない」
「社員が育たない」
「だったら自分がやった方が早い」
といって、任せられないので自分がやらなければいけない。でも本当は、やりたくてやっているんじゃないと思っている。

さすがにこのようなことについての統計データはありません。
ということは、どこでもそのようなことは起こっているだろうというような状況があるにもかかわらず、社内特有の個別の問題として割り切られてしまい、直接支援を差し伸べる、あるいは支援を受ける手段がほとんどありません。
多くの社長が、だれにも頼ることができず、人知れず、自分で抱え込んでいる、という状況なのです。

そしてこの状況が、どんどん社員を社長依存に導いていってしまっているのです。
社員には育ってほしい、自立してほしい、利益が出るようになったら給与を増やしたい、と思っているにもかかわらずです。

もう一つ、社長がこの負のスパイラルから抜けられない大きな要素があります。
それは、社長が優秀であるということです。

社長が理想とする工場の姿は、社長が優秀であるからこそ思いつく崇高なものです。作業する社員には到底わかりません。
そして、社長が優秀であるからこそ、とても高いプライドの持ち主です。
理想とする工場を作り上げるには、下手な仕事なんかできません。まして、「たったそれだけのことで!?」と思うようなことがきっかけで発生したクレームなど、許されるものではありません。
理想を掲げることはよいことではありますが、工場経営だけでなく通常の生産活動をも社長にしかできないものとなってしまい、それが社員を社長依存にしてしまうとても大きな要素になってしまっているのです。

社長に何かがあったとき

冒頭の社長は、御年76歳。
人生100年時代とは言いますし、まだまだ元気で活躍される方もたくさんおられます。
しかし、正直、この先何年も安心していられるかと言えば、もうそんな年ではないといわざるを得ません。

あまり考えたくはありませんが、もし、今日の夜社長に何かがあり、社長が現場に出ることができないようになったとき、明日から社員だけで回すことができるでしょうか?
仮に、これまでの社長の努力で、半年後までは何とかなるキャッシュがあったとしても、仕組みのない工場、ノウハウを持たない社員だけで現場を回すことができるでしょうか。お金で解決できる問題でもないのです。

「そうなったら廃業する」という声が聞こえてきそうですが、その結果が、承継より廃業の方が多いというデータに表れているのかもしれません。

そのまま続けても解決には至りません

どんな社長でも「自分が元気な間に返済を終わらせよう」「もっと楽な状態にしてから引き継がせよう」と考えているものです。
まじめな社長ほどそう考えます。プライドのある社長ほど業績の悪い会社を残したくありません。
しかし、今のように社長自身が身を削ってがんばらなければ回らない状況では、体力の限界が先か、完済が先か、そんな状況かもしれません。

また、社長が思う「もっと楽な状態」は、いつか自然にやってくるものではありません。
今のままのやり方を続けている限り、絶対にその時が訪れることはありません。
「社員が育たない」「だったら自分がやった方が早い」そうして社長が一人で抱え込み続ける一方で、
社員はできることが限られたままなのに、世の中の賃金上昇圧力の中、給与を上げざるを得ない。

このようなやり方のまま、良い工場になっていくことがあるでしょうか。
もしかしたら、解決策さえないまま、日々発生している問題の処理に追われているだけになっていないでしょうか。
今のままでは、さらに苦しくなり、体力的にも金銭的にも苦しくなっていくのです。

社長が高齢になるほど、投資意欲も低下するというデータもあります。
投資が止まれば、工場が今より良くなることはありません。

だからこそ、少しでも早く、社長ひとりの頑張りに依存した仕組みそのものを見直す必要があるのです。

そろそろ今の状況から抜け出しませんか。