工場自動化経営 自動稼ぎ装置化 ステップ61

61.現場に必要な判断材料は?

社長がいなくても回る工場は、
事実に基づく情報が共有されている
社長がいないと止まる工場は、
発信するワードで印象付ける

今月は、国政選挙がありますね。

ひと昔前の選挙では、選挙カーに乗って名前を連呼し、結局この人何を訴えているのかわからないということが問題だとよく言われていました。

しかし、SNSなど発信手段が多様化する中で、具体的な政策が聞こえてくるようになりました。が、今度はそれがひとり歩きして本来の意味や言葉よりもイメージ先行で広まるようになったり、発信自体がウソなのかホントなのかまで疑わなければならなくなったり、発信側より受信側、投票する側の判断力がとても重要になってきているように思います。

管理者の発信は正しいのか

ある工場の月例ミーティングでの、管理職から現場作業者への発信内容です。

「今月の生産数は、◯◯生産ラインの受注が大きく増えていて、先月の約1.5倍にもなります。今月いっぱいかかって生産しますが、稼働時間が不足するので、夜勤時間帯にも生産をすることで対応するようにします。」

というもの。

モニターには、先月の生産実績数、今月の計画数、計画数を完了するために必要な稼働日数が表示されています。

さらに、他にも増産になっている生産ラインがあり、アレコレ忙しくなることが伝えられました。

実際に作業の対応をする側の作業者も、この話を聞いてウンウン頷いています。

そして、「今月もよろしくお願いします。」と月例ミーティングは終了しました。

この後の結果はどうだったのかというと、

「22日間の稼働予定でしたが、3日早い19日間で終了し、月末は他の生産ラインの応援や翌月生産分のうち高負荷な生産ラインの生産を先行して行いました」

と、A社長は管理職から報告を受けました。

「そうか、それは良かった。みんなの生産対応力が上がったんだね」

と返答はしましたが、なんだかモヤッとしています。

私は、「社長、そのミーティングでの管理職から作業者への指示は、全く根拠がありませんよ」「実際に設備能力から算出してみてください」

とお願いし、計算してもらったところ、

月末いっぱいまでかかると思われたものは、設備の段取り替えなど停止しなければならない時間分の余裕をみても、実際には、8時間稼働で3週間ほどで終わるものだったのです。

そして現場では、かなり余裕を持った生産能力を元に管理職が発信し、その内容を全て鵜呑みにする作業者、という関係性ができてしまっているのです。

冬であれば、いつインフルエンザが蔓延して生産能力が落ちてしまうかわかりません。しかし、その余裕が常時認められてしまう状況では、生産能力向上のための改善など起こるはずがありません。それが精一杯と管理職が言っているような状態なわけですから。

また、作業者側はといえば、設備の生産能力、設備の回転数や停止時間など具体的な数字を把握したことなどありません。このような状態であれば、管理職からの指示しか情報がないわけで、そんなものかと受け入れるか、反発反論というわけではありませんが、指示に意見するには、作業者のなんとなくおかしいという違和感、しかも忙しくなるのはイヤという防衛反応が働いた時だけです。

そのような状況にありながら、「考えて行動しろ」という管理職やベテラン社員がいるのですから、これはたちが悪い。

聴く側の役割を考える

そこで考えなければならないのは、情報を受信する側が賢くならなければいけないということです。

設備の生産能力や、計画数分完了するのに必要な人数、時間など、数字があれば電卓でも計算できるようなものです。

しかし、この計算式が何もわからないまま、管理職の指示を何も考えずに聞いていたり、生産管理システムにより算出された数字をそのまま鵜呑みにして計画を立てていれば、効率が悪い生産をしていても、だれも何も気づくことはありません。

「受注量が先月の1.5倍」というこのインパクトのあるワードだけで行動すれば、当然正しい行動をすることはできません。ある意味、「休んでいる暇なんかないぞ」「気を抜かずに作業しろよ」を、恐怖で縛って煽っているようにも見えてしまいます。

昔はそれが、まかり通っていたのかもしれませんが、今の時代、そんなできない無理を強いられる職場は絶対に長続きしません。

管理者と作業者のやり取りのあるべき姿とは

発信する側は、希望が持てるような発信、受信する側は、なんとかしようとする解釈、両者が揃うのが理想です。

そしてこれを実現するために両者に必要なのは、どちら側から見ても変わらない事実、情報です。

今回の例で言えば、生産能力の数値と実際に必要な稼働日という情報でしょう。これをみて管理職と作業者が議論すれば、いろいろな工夫をすることができるでしょう。

選挙で立候補者が訴える政策が実現することで得られるものは、個人の懐が暖かくなるだけでしょうか?日本の経済が良くなることでしょうか?それとも?

この得られるかもしれない未来を、将来の事実として把握し考えなければ、自分の生活が良くなるのか、この国が良くなるのか、自分が思う正しい判断はできないでしょう。

選挙期間中のわかりやすい、インパクトのある、聞こえの良い発信だけで、国民は正しい判断ができるでしょうか?

この関係性は、まさに工場内で行われている管理職側の発信能力と、実行する側の作業者の受信能力にとても似ています。

発信する側だけでなく、受信する側がどう判断するかが、結果を大きく左右する時代になってきているように思います。

あなたの会社では、管理職は正しい発信ができていますか?

現場の作業者は、正しい判断ができる耳を持っていますか?