社長がいなくても回る工場は、
社長が経営判断できる
社長がいないと止まる工場は、
社長が周りに合わせる
新年になり、はじめて会う取引先の方とは、まずは「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。」と決まった挨拶の後、仕事の話が始まるのが通常です。その状況からそろそろ落ち着いてきたのではないでしょうか。
そして企業によっては、グループ企業、関係企業等集まったり、経営者団体、商工団体、業種団体なども、新年挨拶会などと称して集ったりするものです。
多くの経営者にとって、このイベントは年始の重要なものではないでしょうか。
そんな中、ある経営者からとても考えさせられる話を聞いたのでご紹介します。
中国地方の山間部にある、15人ほどの小さな工場のM社長の話です。
年が明け、経営者が集まる新年挨拶会があったそうです。その集まりでは、異業種交流会というようなものではなく、日ごろ取引を行っている利害関係のある人たちが集まるところですので、どの企業も経営に直結する重要な企業です。したがって、M社長にとってもこの集まりは新年のとても重要なイベントでした。
ショックと感謝の同居
話は半年前に遡ります。
M社長は県外の経営者仲間とゴルフに行ったそうです。東京、埼玉、千葉など普段なかなか会うことができない方とも会える貴重な機会です。M社長は、そこに照準を合わせ日々スケジュールをこなしていました。
めったにない機会ですので、みなさん一緒に宿泊。飲んでしゃべって、日ごろ聞くことができないような話も聞き、たくさんの刺激をもらい、M社長はいつしか寝落ちしていました。
気付けばあっという間に朝です。
さあ、ゴルフの準備をしようと起きたとき、周りのみなさんがとてもざわざわしています。
「M社長!いびきがひどすぎます!」
「私は何度も起こされ眠れませんでしたよー」
「息も止まっていてヤバいですよアレ」
と、みなさんに今まで言われたことのないことを言われ、結構なショックを受けました。
今まで子どもや妻のいびきがうるさいと思っていましたし、家族からも言われたことがなかったので、自分はいびきをかくことはあっても、人に迷惑をかけるほどとは思っていなかったのですから、この思いもしない忠告にショックを受けるのも仕方がありません。
後で聞くと、どうやら、家族は当たり前のものとして捉えていて、わざわざ言いもしなかったそうです。
同じ部屋に泊まった方の一人は、その症状から「睡眠時無呼吸症候群」の話をしてくださり、今は大丈夫でも年齢重ねるにつれて他の病気になるとか、いろいろアドバイスをしてもらったそうです。
そうなるともうゴルフどころではありません。
その日のスコアは、とても言えるようなものではなく、帰ってすぐに病院に行ったそうです。
M社長は病院で症状を伝え、案の定、「睡眠時無呼吸症候群」の疑いを伝えられ、精密検査を行うことになりました。
しかしこの日程がなんと2か月も先。
外来の先生も、県外の大学病院からわざわざ来てくださるちょっと特別な方の様で、同様に患者さんもその日に合わせて県外からわざわざ通っている方もあるようです。そのため精密検査がそんなに先になってしまうんだとか。
ちょっと自分は特別な病気なんじゃないかと不安だったようですが、そんなに同じ症状で困っている方がおられるのかと、変に安心もしました。
社長にとって究極の選択
そして、その数週間後、冒頭の「経営者が集まる新年挨拶会」の連絡があったそうです。
しかもその日程が、精密検査とブッキング。
出欠の返事をしなければいけませんが、M社長は悩みました。
新年早々、大事な集まりを断ること自体、この年は縁起がよくない、何かあるんじゃないかと自然と悪いことを考えてしまいます。主催する企業にも悪い印象を与えてしまいます。
でも、この機会を逃せば、また少なくとも2か月先まで精密検査を受けることができず、症状が悪化するのをじっと我慢していなければいけません。
そこでM社長は決断しました。
新年挨拶会の欠席を報告したのです。
社長の行動は会社の経営方針そのもの
私はこれを聞いて安堵しました。
ずっと無理を続けて来られた社長です。経営者としてはまだ若い方かもしれませんが、年齢的にはもういい年です。これから先、病院にかからなければいけないような病気が見つかってもおかしくありません。
それを放置しておくということは、私は「経営を放置する」ことと同じだと考えています。
社員のモチベーションを上げようと、昇給したり賞与をアップしたり、セミナーに参加させたりいろんな手段があると思いますが、どんな手を打とうとも、経営者が元気でなければ、給与は上がったのにモチベーションが下がっているということも起こります。
社長は企業の姿そのもの、社長の行動は会社の経営方針そのものなのです。
精密検査の結果、治療方針が決まり、その他悪いところはないとのことで大ごとにならず済んだとのことです。
しかし、この病気はいろいろな別の病気を引き起こし、それが隠れて進行していることも多くあるようで、場合によってはそちらの病気で入院や治療ということもあり得ます。
年を重ねれば仕方がないことかもしれませんが、少なくとも、そのようなことが起こって社長がいなくても現場は回っているという状況は作っておきたいものです。
そのような状況でなければ、M社長は、精密検査どころか、ゴルフにも行くことはできませんし、ひどいいびきや無呼吸状態を見つけて指摘してもらえることもなかったでしょう。
経営者は現場に居なければいけません。その現場は「経営の現場」であり「生産の現場」ではありません。
あなたの工場では、社長が入院しても現場が回る仕組みになっていますか?
体調が悪いのを年のせいや気合いが足りないせいにして、病院に行かずがんばっていませんか?
会社は社長がいなければ成り立ちません。



