社長がいなくても回る工場は、
社長の善意を仕組みにする
社長がいないと止まる工場は、
社員の善意を当てにする
ここ数年、様々な「異常気象」が起こっているようですが、今年は、長期に居座る寒波、そしてそれによる長期に続く大雪ととても大変な地域があるようです。
と、他人事のように言ってはいますが、私が経営する地方の工場も日本海側にあり、冬になれば必ず除雪作業が必要となる地域です。
したがって、時期になれば、テレビでは大雪が降るから気を付けて!という賑やかなお天気ニュースがあり、最近の天気予報はとてもよく当たりますので、おおよそ予報通りの雪が降り、除雪作業をするわけです。
毎年筋肉痛になる、うんざりする作業ではありますが、その地域に住んでいれば当たり前のこと。
都会のテレビ局が、秘境の地の珍しい自然現象を見ているかのように放送しているのが、少し不快ではありますが、雪が積もったところを見たことがない人からすれば、そのような反応になるのは仕方がないのかもしれません。
同じ地域のM社長との会話です。
M社長「昔は、大雪になると、男社員が早く出勤して、みんなでスコップをもって雪かきをしたもんだなあ。今ではそれも頼めなくて業者に頼んでるんだけど、お金がかかって仕方がないよ」
「そうですね、以前とはずいぶん変わりましたね」と、私も同じく思うのですが、この会話のあと、大雪という自然災害とも取れる現象について、そこに住む私たちはどうするべきなのか考えました。
仕事は止めてはならない
工場経営をしていれば、顧客、取引先がその周辺地域だけ、言い換えれば大雪の大変さがわかる人たちのコミュニティーだけで済むことはありません。納品先は近隣だったとしても、最終ユーザーは全国、海外だったりしますので、はっきり言ってしまえば、この大雪はこの地域以外の人には何ら関係ない話です。したがって、大雪が降ろうとも、工場を経営するからにはそれに対処できるすべを持っていなければいけません。
大前提として、仕事を止めてはならないのです。
大雪が降る地域では、それによる交通障害により、モノや人の移動ができなくなり、入庫できない、納品もできない、出勤さえできない、ということはあります。
PCで仕事が完結するのであればテレワークでよいでしょう。また、屋外が現場という仕事であれば、雪で埋もれて作業もできないでしょうから出勤しなくてもよい場合もあるかもしれません。
しかし工場ですから、ほとんどの業務がテレワークが不可能。出勤さえできれば業務は進められますので何とかして出勤するというのが普通です。
ですから多くの人は、車が埋もれてしまわないように前日から雪かきをしたり出やすい場所に車を移動したりし、朝もいつもより早く起きて夜の間に積もった雪の除雪をし、渋滞があっても遅刻しないよう1時間早く家を出るなど対応します。
業務でも、大雪が降ってから慌てるのではなく、事前に天気予報を確認し、余分を発注しておいたり、納品を済ませたりしておくことで、取引先や顧客、同僚らに迷惑をかけないよう対応します。
それでも、想定外の積雪によりどうにもならない場合もあります。
よくあるのは、雪のない地域から来たノーマルタイヤの車による事故により、国道が塞がれてしまったとか、除雪機が出動しているため、除雪機の後ろを走るとそれより早く進めないとか、除雪した後もあっという間に数十センチの積雪により、どうしようもない状況になったりします。他にもたくさんありますが、大雪によりいつもどおりの仕事ができないことは避けられません。
時代の変化
規模の大きなお店や会社などは、それだけ大きな駐車場を持っていたりします。
この広さを人が除雪をしていたのではいつまで経っても開店、始業できませんので、多くの場合、地域の建設業者などの重機を持っている企業に除雪作業をお願いをしているようです。
また、最近では、会社が小型の除雪機を持っていることも珍しくなくなってきましたので、数名が早く出勤して除雪作業をしている風景を見るようになりました。
しかし、数年前までは、社長から社員に向けて「明日は雪だから30分早く来て雪かきをしてくれ」とか「大雪の日には、社員は早く出勤して雪かきをすることが暗黙の了解になっている」など、云わばボランティア作業となっていました。そして、体の疲労と闘いながらその日の業務を行うのです。
現在はどうでしょうか。
「強制的にやらされているのに給料が出ない」という状況であれば、まずは「雪かきは業務の一環ですか?」と上司に確認するのが、いちばんのアドバイスのようです。
前述のM社長が当時のまま社員に雪かきを頼んでいれば、監督署から勧告を受けなければならない案件なのです。
最適解は何か
工場経営において「雪だから休む」が通用しない以上、除雪は「生産ラインを維持するための設備投資・メンテナンス」と同じカテゴリーに入るでしょう。
M社長が業者に頼んでお金がかかると嘆くのは、かつて「社員の善意と体力」でカバーしていたコストが、「外注費」という目に見えるコストに置き換わったからでしょう。 これは経営として非常に苦しいことですが、「社員のボランティア」という不安定な要素に頼らず、持続可能なシステム(除雪機や外注)へ移行しなければならない時代になっているということでしょう。
M社長は、除雪作業という外注費を毎年数十万円払っていました。1シーズン○○センチ積もったら出動する、という契約のようです。毎年小型除雪機が購入できるような金額です。
そして、現場は社員だけで回せるようになっていますので、大雪でどこにも出ることができない状況では、この日M社長はヒマなんです。
建設業者に外注するまでは、ずっとスコップで除雪していたのですから、機械で除雪ができるなんてそんな楽な話はありません。そう考え、小型除雪機を購入し、再び自分で除雪することにしました。
これがM社長の、社員に頼まず、外注費を使わず、除雪をする新たな作戦でした。
社員には一つだけお願いをしているそうです。
「1時間遅く出勤して」と。
これにより、社員は、渋滞に巻き込まれることなく、除雪が完了した街中を走ることができ、そしてM社長は時間に余裕をもって除雪をすることができるのです。
大雪の日、M社長は雪かきをするだけでその日の仕事は終了。朝イチがんばるだけで、社員にも取引先にも喜ばれるわけです。
あなたの会社では、自然災害に対応できていますか?
昔ながらの体制のままではありませんか?



