工場自動化経営 自動稼ぎ装置化 ステップ59

59.社員ができること、やらないこと

社長がいなくても回る工場は、
人の能力を見極めている
社長がいないと止まる工場は、
全員に同じことを求める

最近、生成AIに関するセミナーがとても増えました。

誰もが知っているChatGPTで検索、相談止まりの人、あるいは基礎的なことを教えてもらえる無料セミナーに参加して、その通りにやってみる人。一方で、自らどんな生成AIがあるのか探し出し、画像を作ってみたり動画を作ってみたり、さらには仕事で作成する資料を爆速で作ってみたりと、かなり有効活用している人もいます。

現場社員が避けるクリエイティブな仕事

割とITには詳しいA社長から聞いた、ある会議での話です。

A社長が社員に“AIを使って提案してほしい”と投げかけたのですが、返ってきたのは「できない理由」ばかりでした。その根本原因は“日頃の仕事の性質”にあると思うような話でした。

「この取り組みをしてみたいんだけど、自分(A社長)も何から始めたらいいかわからないんだ。AIに聞いたらいろいろ考えてくれる。みんなもAIに聞いてみるなどして調べてみてくれないか」

「会社のホームページを久しぶりに新しくしたいと考えているんだが、AIに聞くと操作方法などいろいろ教えてくれる。みんなで考えて作っていきたいと思うんだがどうだろうか」

こんなことを投げかけたことがあるそうです。

社員からの反応は、

「AIに聞くと言っても、社長からの指示がないと」

「社長もわからないこと、いくらAIが教えてくれると言っても私たちが決められない」

「生産で忙しいので・・・」

これだけでは終わらず、できない理由、やらない言い訳が出てきた後は沈黙です。

これからAI必須の時代というのに、なんと呑気な社員たちでしょう、と言いたいところですが、生産現場で、生産計画に従い指示された作業を、作業マニュアルにしたがって忠実に作業していくことが日常となっている社員にとって、生成AIを使ってクリエイティブな日常にないことをすることは、とてもハードルが高いことでしょう。

クリエイティブな仕事とは

A社長の提案のように、生産現場の作業ではない新しい取り組みをする、ホームページを作るなどは、まさに新たなものを作り出すという意味でクリエイティブな仕事と言えるでしょう。

このような仕事は生産現場にはないかもしれません。

しかし、生産現場に「クリエイティブな仕事」というものは本当にないのでしょうか?

そもそも、クリエイティブな仕事というものの定義が必要でしょう。

「ものづくり」というこの言葉を聞けば、クリエイティブな仕事というイメージが湧くかもしれません。しかしその「ものづくり」を構成している多くの工程は、生産計画に従い管理者の指示通りに作業をする、また作業マニュアル通りに作業をするということの集まりで成り立っています。

それはなぜかといえば、ただ一つの一品モノを作るのではなく、世界中の人が同じ機能、同じ品質、同じ価格のものを欲しい時に買い、使いたい時に使えるようにするには、工程の一つ一つが図面通り、指示通り、マニュアル通りに狂いなく作業されていなければ実現しません。

工程ごとに作業者が、今日は端子を一つ増やしておこうとか、今日はこの角を削っておこうなどその都度考えその人にとっての「クリエイティブ」を発揮してしまえば、同じものが買えなくなるからです。少々形が変わっているくらいならまだしも、使えるはずの機能があったりなかったり、良品だったり不良品だったりすれば、それはものづくりとはとてもいえません。

では、「ものづくり」ではクリエイティブな部分はないのでしょうか?

もちろんそんなことはありません。企画、開発、設計などの上流工程は特にクリエイティブな仕事と言えるでしょう。しかしこのクリエイティブな工程でも、企業のノウハウとして今までやったことを溜めていき、そして再現性があるように、また誰もが同じ成果を出せるように業務を標準化していきます。

そして、生産現場は特にその標準化がしやすいところ、されるべきところであるため、クリエイティブな仕事は少ないかもしれません。

しかし、生産現場でも、そこにいなければ見つけられないこと、思いもつかないこと、考えられないことなどあるはずで、そこにクリエイティブな発想が必要だったりします。

それが、誰もが知っている「改善」ではないでしょうか。

資材を入荷して倉庫に保管するにも、何も考えないレイアウトで配置すれば、無駄に移動距離が長くなったり、何度も倉庫と生産現場を行ったり来たりしなければいけないかもしれません。

生産ラインの配置も同じです。

また、生産ラインの中にある設備についても、設計されたまま使っているだけでは、これは作業マニュアルに従って、何の疑いもなく作業しているのと同じです。量産してみなければわからないこともあるはずです。設計部門にフィードバックすることが必要だったり、現場の中で作業手順を再考するなどして、生産性向上を目指すはずです。

従って、「改善」するというのは、マニュアル通りに行なっていた作業、白線通りのレイアウトなど、決められた通りに行っていることを、より良くすることですから、今までの考えを超越して新たな作業手順をクリエイティブするということなのです。

そこで重要なのが「仮説」です。

マニュアル通りに作業していたのに不良品が発生してしまった、ということもあるでしょう。この場合は当然のように作業手順を見直します。今までの作業の何が悪かったのか、悪い部分が見つかればその部分を新たにどのような作業にすれば良いのか、不良品が出ない方法を考えます。

これは、解決しない限り場合によっては生産再開さえできませんので、だれでもどうすれば良いかなんとかして考えることでしょう。

しかし、本当に考えなければならないのは、不良品が発生しない方法を考えること、今より生産性が向上する方法を考えるなど、より良くなる方法を考えなければいけません。

この方法の中に、IT化するということもあるでしょうし、今までやったことのない取り組みも考えなければならない場合もあるでしょう。

これらには当然、ある程度の方向性、考えられる工程くらいは出せるかもしれませんが、上司からの具体的で細かい作業指示もなければ、標準化された作業マニュアルもありません。

さらに細かいことを言えば、例えば、生産設備の調整をする作業があるでしょう。部品を取り付ける手順、部品の位置、使う工具などは作業手順を標準化し、作業マニュアルが作成されていることでしょう。しかし、この作業の中には、作業者が持つスキル、センス、経験、勘などが必要な部分がどうしても出てきてしまいます。どんなに言語化してもしきらない部分があるものです。この部分はホームページに使う画像をどんなものにするか要件を設定することはできても、具体的なコレという画像を作成、決定するのと同じ作業ではないでしょうか。

クリエイティブな仕事にどう向き合うか

話を冒頭のA社長と社員の皆さんとの会話に戻しますが、世の中には、改善手法などの情報は限りなく存在しています。当然Web上にもたくさんあるわけで、生成AIにその情報を整理してもらう、対策案を考えてもらうということは改善の取り組みを大きく前進させることでしょう。そんな便利なツールを使わない手はありません。

しかし、設備調整における微妙な力加減、ホームページの画像選定における美的センスなど、どんなに生成AIに相談しても解決しないこと、最終的には現場の人間が実行しなければならないこと、これらは、どれだけマニュアル化しても、最後は「その人」の能力に依存します。

可視化、言語化、そしてマニュアルを作成することで「誰もができるようになる」ということを前提に属人化解消を考えている限り、社長は永遠に手順を準備し続けなければいけません。

可視化、言語化、そしてマニュアル化は、手段であって解決策にはなりません。

クリエイティブな仕事をどのように社員にやってもらうか、これは仕組みがなければいけません。マニュアルは仕組みの中で使って役に立つのです。

生産性向上のために行っているはずの小集団活動で改善が進まないなら、それは小集団活動という仕組み自体に問題があるかもしれません。

あなたの会社では、生成AIを使いこなし生産性向上に繋げることができていますか?

クリエイティブな仕事を社長が全て抱えていませんか?