新着情報

News

コラム
2025.12.16

55.新規事業への投資・行動を躊躇する経営者へ



新規事業を立ち上げることの難しさ

今年も気づけば12月。年始には既存の製造の仕事の他に、新しい事業に手を付けようと計画しておられた方も多いのではないでしょうか。既存の工場を稼働させながら、空き時間にやろう、今は生産の方が優先なのでこれが落ち着いたら始めよう、などと考えているうちに、特に何も進まないまま12月を迎えてしまったという方も多いのではないでしょうか。

今の事業をそのまま未来永劫継続できるということは100%ありません。ですから、その対策として新規事業を検討したり、新商品を開発したり、今の事業の発展形なのか、全く別の形なのか、それは経営者であればだれもが考えていることです。

しかし、それを実行し形にした経営者は、実は本当にごくわずかです。

一般社団法人日本能率協会が、JMAの法人会員ならびにサンプル抽出した全国の製造業主要計7,560社の代表者または製造部門の責任者を対象に調査した結果があります。
その調査の中で新規事業開発に関する内容もあります。
製造業の約7割が新規事業開発に力を入れている しかし、事業目標達成度は「目標以上」が2%、「目標通り」が24%にとどまる
という結果のようです。
https://www.pr-today.net/a00481/opr/1486/

やはり新規事業を立ち上げ、新たな収益の柱にするということはとても難しいことのようです。

さらに、この調査では対象者は、「JMAの法人会員」という新規事業や企業の課題解決に特に前のめりな企業と、「全国の製造業主要計7,560社」、売上高10億円未満の小規模な企業は、回答のあった企業の3%ほどという選ばれし企業です。
今の生産をこなすことだけで必死な、企業規模も経営資源も小さな工場で調査をすれば、さらに低い結果となるのではないでしょうか。

言い出せばキリのない成功しない理由

この手のアンケートでは必ずと言ってもいいほど、「なぜできないのか?」「何が不足しているのか?」というような問いがくっついてきます。
・収益を立てられるビジネスモデルが構築できない
・新市場を形成できない
・営業力・プロモーション力がない
・技術開発できない
など、アンケート作成側が意図するような項目が並び、大抵どれも当てはまっているのですが、選ばざるを得ません。

そして最終的に、
「人材不足」
という、どの経営課題にも当てはまる原因とは言えない原因でまとめられてしまいます。
人材不足は原因ではなく結果なんですが、今回はその話は置いておいて、新規事業が成功している企業でも、経営資源がそろったからできたということではないでしょうし、できない理由が解決しているわけでもないでしょう。

特に工場経営では、外側に向けたプロモーションや営業面よりも、工場内の技術や改善に目が行きがちです。
材料を仕入れ→加工し→納品→見積り通りの利益確保、がおおよその流れです。したがって、間違った見積もりさえ作っていなければ、よほどルールを無視した買い叩きがなければ、多い少ないはあるにしても利益は計算可能です。
利益が多くても少なくても、その範囲内で経営をすれば、会社はつぶれることはありません。

社長にしかできない経営判断

しかし、新規事業を始めるということは、未知のもの、投資した分回収ができるのか、利益が残るのか、見通しが立たないものに向かっていかなければいけません。もしかすると、既存事業にまで悪影響を与えてしまうリスクもあります。
実際、既存事業が右肩下がりになっている企業こそ、新規事業に向かわなければいけない、新しい売り上げの柱を作りたい、そのための融資を受けたいはずなのに、融資する側は、既存事業に不安材料があるのに新しい事業に対して融資することは躊躇する。こんな悪循環があるのも事実です。

金融機関から融資を受けようとして、金融機関から言われたとおりにしていても、新規事業が生まれることはありません。
社員に任せても、今の仕事で手一杯なのは当然です。新規事業のことをやる余裕なんかありません。さらにその知識もないでしょうから路頭に迷うのは目に見えています。
右肩下がりの売上、お金が減っていっているのを目の前にしても、未来を切り開く手段は新しい挑戦しかありません。

経営資源は限られていて当たり前です。だからこそ、完璧な条件がそろうのを待つのではなく、考え抜いた上で一歩を踏み出すことが大切です。
現場で忙しくしている社長であれば、その時間の捻出は困難かもしれません。しかし、この経営判断ができ、行動に移すことができるのは、社長しかいないのです。

ある週の投資の実費

私は先週、東京での勉強会に出向き、飛行機代15000円×往復、ホテル代10000円×3泊、勉強会代25,000円。年に1度しか会えない方たちとの忘年会○千円×α、契約の件について押さえておくべき内容を弁護士さんに相談1時間10,000円、新規事業の関する専門のコンサルタントに相談2時間○万円。これだけで軽く10万円は超えます。

実際に、技術や知識の不足を補うとか、儲かるビジネスモデルにするとか、具体的に行動に移すと、こんな感じなんですよね。
計画的な活動であることはもちろん重要ですが、こんな細かい内容まで具体的な予算計画立てることは現実的ではありません。だからこそ、完璧な条件がそろうのを待つのではなく、限られた資源をどう使うのか考え抜いた上で一歩を踏み出すことが大切です。

そして、そのためには、まず社長自身が考える時間を確保しなければなりません。現場の仕事に追われていては、新しい挑戦に向けた判断や準備はできません。
今は、将来の事業を漠然と考える時間になっているかもしれませんが、それでは前に進みません。
工場の仕組み化によって、まずは具体的に社長の時間を捻出することが必要です。
PDFを開く

一覧に戻る