コラム
最近の雇用環境は売り手市場。初任給も大幅に引き上げられ、福利厚生も充実している大企業ばかりに若者が流れてしまっていて、小規模工場には若者は来てくれない・・・。
だれもが疑わない事実だと思いますが、新入社員を受け入れた小規模工場も多くあるはずです。放送するマスメディア側からすれば、ニュースで取り上げても特に面白い話題でもないのでしょう。あたかも若者は大企業にしか行かず、小規模工場には全く人がいないというイメージが刷り込まれていきます。
最近の若者はSNSや動画サイトなどから情報をメインに得ているでしょうから、感覚は異なるかも分かりませんが、マスメディアの影響がなくなることはないわけで、若者たちにとっても小規模工場は選択肢に入らないというイメージが出来上がってしまうことでしょう。
また、大企業の取り組みを扱うマスメディアには、当然大企業の入社式や雇用状況ばかりが放送され、小規模工場の情報が流れていた時には、特に変わった取り組みをする企業の情報で、それが小規模工場の普通ではありません。
小規模工場の普通の取り組みを取り上げたところで、だれも興味を示さないだろうとメディアの方々は考えておられるのかもしれませんが、小規模工場の社長たちも限られた資金の中でいろいろ試行錯誤しているものです。
そんな華やかな情報ばかり見せられて、
「大企業は初任給上げられるのかもしれないけど・・・」
「大企業のように、入社式であんなに派手にお金をかけられない」
「特徴的で奇抜なアイデアを持つ、目立ちたがりな社長のようなことはできない」
と、結局どのようにすればいいのかわからないまま入社式シーズンが終わり、また何もできないまま入社式シーズンがやってくる。。。
そもそも、派手な入社式、お金をかけた入社式、大企業のような入社式が、「いい入社式」という定義はありません。
目立ちたがりな社長の自己満足で終わってしまっては、入社式の意味は全くありません。
メディアに取り上げられるような入社式を望んでいる若者より、明らかに入社後に気付く、設定されたインフラ、若者に対する先住社員の立ち振る舞い、社員教育の環境など、こちらの方がはるかに重要です。
自分が若者だった時の心配事と、今の若者が感じる心配事は同じではないかもしれませんが、はじめての場所に行く、はじめての仕事をする、すべてのことが初めてのことばかりです。緊張感や不安に襲われていることには変わりありません。
玄関がたくさんあるけどどこから入ったらいいのか、自分のロッカーまで来たけど何を入れて何を現場に持って行くのか、カギはどうしようか、トイレに行きたくなったけど呼ばれるかもしれない・・・など、1週間も経てば何のことはないことに不安になっているものです。
このようなことに関しては、大企業に入社した若者も小規模工場に入社した若者も変わりはないかもしれません。
例えるなら、初めての場所に連れて来られた猫が、においを嗅いで回って「安全確認」するような作業が必要です。
この段階で「この会社はヤバい」と思われるような状況は論外として、問題はその先です。
若者による「安全確認」は、現場に出て本格的に行われます。
「この会社はヤバい」と思われないかどうか神経を尖らせる必要があります。
生産ラインに危険な場所はないか、作業手順がちゃんと揃っているか、パワハラなどのハラスメントはないか、など気になることはたくさんあります。
気になることのうち重要なものの一つとして、「現場の作業がIT化されているか」という部分があります。
この部分は実はとても重要です。
小学生時代からPCやタブレットを授業で使っています。日常的にスマホも使っています。
それなのに工場に入った瞬間に、紙に記録をさせられるということに違和感を持つことが普通です。
数百年前から続く伝統工芸的な作業工程であれば、アナログ作業でも仕方がないかもしれませんし、むしろそこに魅力を感じて職人技を身に付けるために入社したのでしょう。
しかし、そうではない工業製品を取り扱う工場であれば、生産性向上のためのIT化というより、世の中に適合している工場であるか?を若者が判断してしまいます。
若者にそう判断されたらおしまい、ということはありません。
とにかく、未来のある若者をがっかりさせないことです。そのためにできることはたくさんあります。
それを社長がひとりでしなければならないわけではありません。
指示を出して先住社員に対応してもらうのか、ITネイティブの若手社員に話を聞きながら先住社員が学習するのか、いろいろ方法はあるでしょう。
大企業のように会社の方針で「これを使え」と渡された高機能なスマホを使わされるのか、小規模工場で試行錯誤しながら、空っぽのスマホに必要な機能を搭載していき業務を進めるのか、IT導入の方法はいろいろです。
大企業がやっているようなことを真似する必要はありませんが、参考にはなります。
自社にあったやり方は必ずあります。