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コラム
2025.02.25

23.経営の可視化・透明性におけるとても重要なこと

ある工場の息子さんとの会話です。 
「うちの社長は経営状態を一切社員に公開してくれない。世間では経営状態の可視化、透明性が重要と言われている中で、粉飾とか悪いことをしているわけでもないのに、コソコソ経営しているようで・・・。」 
創業社長がワンマンで、後継者になる方によくある不安・不満です。 
 
冒頭の息子さんも当然後継者なのですが、決算書をすべては見せてもらえないのだとか。 
最近生産数が減っているから経営状態は良くないだろうとか、大きな設備投資したからお金が減っているのではないか、など実際の数字を見ていないため、赤字具合や負債の程度などは想像の範囲。生産数が増えているようだけど社員の給与への還元具合を見ると、経営状態が良くなったとまでは考えられない・・・。 
良くても悪くても想像の域を超えないわけです。 
 
そのようにして、創業者が亡くなって初めて決算書を見た、経営状態を知った、返済額を知った・・・という後継者の方は少なくありません。私もその中のひとりです。 
 
・・・このまま続けると事業承継問題の話に反れてしまいますので、経営状態の可視化・透明性のはなしに戻しますと、 
 
創業者のご子息・ご息女、そうでなくても後継者という立ち位置であれば、常務とか専務とかの肩書きのつく取締役になっていることがほとんどです。 
そうなると、社内の問題解決や社外との交渉など、社長よりも実務を行っている立場であることも多くあります。 
そのような立場であるにも関わらず、過去にどんな取り組みをしてどういう結果になったのか、過去の実績から予測を立てて今後の取り組みを考えたいところで、実数を見ることができないことはとてもストレスになるのは当然で、ちゃんと決算書見せてくれ!と言いたくなる気持ちはわかります。 
 
一方で、社員のみなさんはどうでしょうか? 
世間的に決算書は公開するべき、経営の透明性が大事だと言われていますが、この言葉に引っ張られ、社員に決算書を見てもらうことが目的になってしまうことがよくあります。 
 
一度、次のことを確認してみてください。 
「決算書を社員に見せて、社員に何をしてほしいですか?」 
「社員はそれをできますか?」 
 
社長と後継者は、決算書くらい当然見ておかなければいけません。 
企業理念やビジョンなどこの会社でこんなことを実現したい、という野望のようなものがどんな経営者にもいくらかあります。それはとても重要なことで、そんなことを考えてくれるのは経営者くらいで、経営者がそういう理想を持ち実現しようとしてくれるから、この世の中は回っていることは間違いないです。 
そして経営者は、社員をやっている人たちより圧倒的に少ない貴重な存在です。 
 
したがって、経営者という存在はとても重要だと私は思っているのですが、その野望の実現・継続のためには経営状態がよくなければならず、それを第3者でもわかるようにし示したものが決算書であるため、社長と後継者は、決算書くらい見ておかなければいけません。   
 
会社を継続できるかどうかを示す、そんなに重要でわかりやすい資料なのに、社長はなぜ社員に決算書を公開しないのでしょうか?  
その理由は2つあると考えています。 
 
ひとつは「プライド」です。 
自分の通知表を見られるようなものです。会社の頂点に立つ社長が悪い通知表なら見られたくない、自分をよく見せたい、と思っていることでしょう。 
そんなつまらないプライドなど・・・と言わないでください。 
社長とはそういう生き物です。 
 
もう一つは「社員をはじめ自分以外を信用していない」。これに尽きます。 
後継者に引き継ぐためには、良い経営状態になるまでは自分が何とかしなければいけないと考えます。 社員は生産する人だと思っています。経営に関することは自分の役割です。話そうとも思いません。 責任感が強すぎるのです。 
 
さらに言うと「社員に決算書を見せれば何を言い出すかわからない」といった、疑心暗鬼とも取れる心配や不安を抱きます。 
自分が思い描く野望やビジョンを納得してくれる社員がどれだけいるでしょうか? 
経営状態の悪さを知ったところで、どれだけの社員が奮起してくれるでしょうか?  
そして、決算書を見て経営の何がわかるでしょうか? 
このような思考の中で、決算書を見せる気が起きるはずがありません。 
 
このようになってしまうのは、社長と社員とのこれまで長年培ってきた信頼関係の構築の結果です。ご子息が公開を要求しても、すぐになんとかなる話ではないことは想像つくかと思いま。 
このまま「社長-後継者-社員」のこじれた三角関係を続ければ、いつまで経っても現場を社員に任せることはできません。 
この状況をなんとかできるのは、社長しかいません。 
 
社長しかいませんが、決算書をすぐに見せろと言っているのではありません。 
答えは、社長室や事務所、決算書にはありません。現場に落ちています。 
現場の話を聞いてみてください。そして現場の事実を拾ってみてください。 
それが社員が自主的に業務を進めるようになる工場経営を自動化のための最初の一歩です。
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