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88.社長のその話、誰も聞いていません

社長がいなくても回る工場は、
伝わって動く
社長がいないと止まる工場は
言われて動く

9月なのに梅雨のように晴れ間の出ない東京に、1か月くらいぶりに行った時の話です。
セミナーに参加し、その後の飲み会にも参加させていただきました。
ビジネスも人生も何においても私の手の届くような方々ではなく、本来は大変緊張する場面だと思うのですが、さすが人生の先輩方、こんな私でも受け入れてくださり、気分よく飲んでいた時の話です。

こんな方々と飲むチャンスはない、何も聞かずに東京を去ることは、わざわざ飛行機で飲みに行っただけ、なんてことになってしまいます。
お酒の勢いもあり、色々なことを質問させていただきました。

さすがにその内容は控えさせていただきますが、普段の自分の悩みをそのまま話し、今考えていることもそのまま話し、そう質問しつつも、いつも同じようなことに悩んでいて自分はなかなか変わることができていないんだなーと、また別の悩みまで思い出したり・・・。

そして、盛り上がった宴会は終わり、ホテルに帰って、教えていただいたことを何度も振り返っていました。実際に行動に落とし込むには?と書き出してみたり。

いつもなら、こんなことを学んだんだと振り返り、わざわざ東京に来てよかった!とスッキリして帰りの飛行機に乗るのですが、今回はなんだか違います。

新しいことを学んで、新しいことを得られた、という感じが全くないのです。
もっと言えば、今までずっと言われ続けていたことをまた改めて言われたような感じ、と言えばいいのでしょうか。今までも自分では考えていたはずだったのに、なぜか解決しようとして来なかった、自分でやってきたことだったのに、全く他人事のように自分の中で片付けられていた、そんな感覚になったのです。

解決策は、自分の中にあるのを知りながら、自分で自分を無視して来たような感じでしょうか。

なんだかそのことが気になり、セミナーで言われていたこと、飲み会で言われていたこと、実際に私が聞いていたことを答え合わせをしてみようと、一緒にセミナーに参加した仲間に連絡を取り、「あの時の話し、どんな話だったっけ?」と聞いてみることにしました。
中学時代に宿題のノート写させて、ってお願いしているような気分でしたが・・・。

すると、帰ってきた答えは、なんとも自分はちゃんと人の話を聞いていたのか?というような内容もたくさん含まれていて、今まで自分で気がついていなかったこともたくさんあったのです。
そして、その内容、答え合わせに付き合ってくれたその仲間が、ずっと私に言ってくれていた内容でもあったのです。

自分でも、無意識のうちに、その問題解決を避けていたのでしょう。
問題と思っていたことも、自分では本当に問題でしかなく、取り立てて強みになることでもないと思っていることでも、実は他から見れば、誰も経験したことのない、人の役に立つことができるかもしれない大切な経験なのかもしれない。
今までの自信のなさも、自分の解釈次第で、自分自身で自分を負の方向に追いやっていたのではないかと。

今まで何度も言われていたのに、はじめて聞き入れた、受け入れることができた、そういうことではないでしょうか。

 

毎月1回、全生産ラインを止め、外に出ている社員も会社に戻し、全社員を集めてミーティングを行います。
そこで、現時点での売上や品質状況など、社長の解釈で社員に話し、その後の業務の方針などを伝えるといったことをしています。
最近では特に、AIによる現場で使用する新システムの開発の話、新システムの運用によりどのように現場の業務が変わるのかという話、集まったデータを現場でどのように活用するのかという話、などなど、社長が感じる多くのことを、約1時間かけて話をしています。

1年ほど前の話です。
その話に基づき、現場の社員の中から抜擢された社員がアプリ開発に携わったり、出来上がったアプリを全社員でテスト運用してみたり、側から見れば、全社員が協力的に取り組んでいると見えるかもしれません。

しかしそんな中で、次のように申し出てきた社員がいました。

「システム開発も必要かもしれないけど、日々の生産をしないと売り上げにならない。
アプリ開発のために現場から社員を抜いたりしているけど、今の人数でそんな余裕ないでしょ?
それに、製造業やってるんだから、作ってなんぼでしょ?」と。

その社員は、1人では2台同時に動かすのがやっとという生産ラインでも、それをしながら別の設備で異常が発見されたらすぐに気づいて対応できる、現場の作業者の間では、どんな仕事にも対応できる「できる人」と信頼されている社員でした。

今日の生産を少し止めてでも、システム化により将来もっと少ない人数で回る仕組みを作りたい。
モノを作ってなんぼ。限られた人員で生産以外のことをする余裕などない、という社員

社長が目指す方向も分かりますし、社員が言いたいこともわかります。

しかし、ここは会社です。会社で行われることは全て社長が責任を負います。

社員の申し出に対し、社長はまたミーティングで話しているような内容を繰り返し伝えました。
この社員もミーティングには参加していますから、そんなことは何度も聞いています、という態度。
話は平行線です。
私のいうことに、「はい」とは言いますが、その社員の耳にはもう入っていません。
納得していないような顔をしますから、例えを変えたり、場面を変えたり、いろいろな切り口から話をしますが、一向に理解してくれる様子がありませんでした。

 

私の話に戻しますが、
セミナーに行って聞いた話、仲間が言ってくれていた話・・・
もしかして、自分もこの社員のように、何度言っても聞いていない、聞き入れようとしない、そういう思考回路になっていたのかもしれません。

そう思うと、社員に対して方針を伝える側、私が「何を」伝えるか、というより、「誰が」「どんな場面で」「どのようにしゃべるか」、理屈ではなく、論理的に正しいかではなく、さまざまなシチュエーションも含め伝え方っていうものがあったんじゃないかと、改めて思ったのです。

私の件は、私が自分でどう行動するか、しかありませんから、自分の周りから入ってくる情報、言葉、声をどのように解釈するかは自分次第です。

しかし、経営の現場ではそうはいきません。経営者と社員。立場が全く違います。そのため、考え方も行動の種類も全く異なります。
従って、セミナーやその後の飲み会で習ったこと言われたことをどう解釈するかも、経営者の立場で聞くか、社員の立場で聞くかということも全く異なるわけで、そうなると、当然解釈もその後の行動も変わります。

今、社員が自分の考えを理解してくれない、自分が言ったことを全く聞いていない、そう思う場面があるとすれば、それは、社員の聞く姿勢ややる気の問題などではなく、社長が伝えようとする時点において、社員が理解し、受け入れ、行動できるところまでの環境を構築できていないのかもしれません。

社長が話していることが、正しいか正しくないか、論理的か感情的か、時代に合っているか遅れているか、ではありません。

社員が行動できるかできないか、結果はそれだけです。

 

p.s.
仲間の伝え方が悪かった、と言っているわけではありませんよ。

 

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