
私事ですが、先週末からインフルエンザにかかってしまい、数日間、完全に仕事から離れることになってしまいました。
長らくこんなことはなかったんですが、東京をはじめ出張が増えたせいでしょうか、帰ってくるとなんだか調子が悪い、ということが時々起こります。その時は、飛行機や電車など移動の疲れとか、都会の方が車を使わず歩くことが多いので、体力的に消耗したのかとか勝手に分析していましたが、1日か2日すれば回復していたので気にも留めていませんでした。
しかし今回は、帰りの飛行機に乗るころからなんだか体がだるいのです。
そして無事に帰宅したのはいいのですが、翌朝から高熱。だるいを通り越して節々が痛みます。水を飲むにも、のどの痛みでなんだか引っかかる感じもあり、「これは東京から何かもらって帰って来たな」と確信しました。
近くのクリニックで薬をもらい、ドラッグストアで水分を買い込み、とにかく寝て過ごしました。
おかげで順調に回復したのですが、以前の私なら、このような場面で、自分の体調のことより、生産現場のことが気になっていたのを思い出しました。
熱が出て何も考えられない、家族としゃべるのも苦痛であるにも関わらず、生産現場がどうなっているのか、こんな問題が起こっているんじゃないか?というようなことだけは思いついてしまうのです。
現場から何かを聞かれても、社員にうつしてはいけませんので現場に行くことはできません。気になることをメールで送ったりするのですが、思ったように返信はありません。以前は、そんな状況にウズウズしながら家で寝ていたものでした。
【インフルエンザの流行は災害級】
災害と言えば、近年、毎年どこかで必ず起こる大雨による水害や、いつ起こるか分からない地震、毎年季節になると身構える台風、地域によっては大雪も災害です。
コロナ禍以降認識されるようになったと思うのですが、ウイルスなどの感染症による事業のストップも災害扱いをするようなってきて、BCP(事業継続計画)の中に含めるようになっています。
そうです。インフルエンザは今や「ひどい風邪」ではなく、災害と同等の扱いがされるようになってきているのです。
昔は、インフルエンザかどうかに関わらず、体調が悪くても熱が出ていなかったら無理してでも出社していましたし、熱がなかったら出れるでしょ?と普通に言われていました。熱があっても37度台なら微熱、まだ大丈夫。なんていうことも言われたことありませんか?
水害、地震などの災害が起こった後、工場のものが流されてなくなってしまったり、逆に外から瓦礫や流木などが流れ込んできたり、とても仕事どころではない状況を見て、「自分のところが同じようになったらどうしよう・・・」と背筋に汗を感じる人もいるでしょう。
もしそのような被害にあってしまった時を想像すると、まず思いつくのは、社長も社員も総出で工場内の片付けをしている姿でしょう。
そんな時こそ、「インフルエンザなんかで寝込んでいる場合ではない」と言いたくなりますが、どんなに気を付けていても、感染するときはしてしまうものです。
今回の話は、だからインフルエンザには気を付けましょうという話ではありません。
【現場に社長が不在なのは当然の仕組み】
インフルエンザで家で寝込んでいようと、東京に出張に出ていようと、現場に社長がいないことには変わりがありません。社長が、社長の本来の仕事をしていれば、現場に社長がいないということは当然の仕組みなのです。
社長の仕事は多岐にわたります。
その中でも、取引先との交渉、新規の取引先の開拓、新製品の開発、新しい技術や世の中の動向などの情報取得などなど、生産現場にいてはできないことが多くあります。
したがって、社長がほとんどの時間、現場にいるのであるなら、工場の将来の仕事が作られてないと考えても間違いありません。現状の仕事を消化しているだけになってしまいます。
また、社長がいなければ現場が回らない組織の場合、水害や地震などの災害が起こって生産ラインが機能しなくなったらどうでしょうか。あるいは、社内でインフルエンザが蔓延して、社員が半分も出勤してこなかったとしたらどうでしょうか。
おそらく社員は、社長がいなければ何も判断ができないことでしょう。
止まってしまった生産ライン、どれを優先に立ち上げればいいでしょうか?
多くの材料がダメになってしまったとき、残り少ない材料を、どのオーダー優先に割り当てればいいでしょうか?
どこの取引先に、何を報告すればよいでしょうか?
社長がいなければ回らない現場であれば、これらの質問に答えられる社員はなかなかいないでしょう。またそれを判断する社員がいたとしても、「社長に確認してから・・・」という答えが返ってくることでしょう。このような危機的な状況に陥ったときでも、社長がいなければ復旧、再開もできないのです。
【平時に社長が不在でもよい仕組みを作る】
全国どこかで災害が起こる時代になってしまいました。しかしそれでも、その災害に合うかどうかは、平常時に、社長が東京に出張で不在だったり、インフルエンザで寝込んでしまったりする確率より、はるかに低いはずです。BCPに対する備えは必要ですが、平時に社長がいなくてもよい現場にすることは、同時にそれに備えることにもつながります。
あなたの工場は、社長が出張に出てしまっても生産ラインは止まりませんか?
社長がインフルエンザで寝込んでしまっても、社員だけで回る現場になっていますか?

